■豊作だった2022年の漫画たち

 まだまだ続きます!四つ目の最優秀賞は!山口貴由さんの『劇光仮面』です!

 作者は『シグルイ』の山口貴由先生。舞台は現代、そしてテーマは「特撮」。現在2巻まで出ているこの漫画。私ムーディが読んだ感想なんですが……「ハッキリ言ってまだよく分からない」です(笑)。

 ただ『シグルイ』で感じた圧倒的なパワー。この漫画を読むと先生の画力だけでそれが伝わってきます。説明してくれ! と言われても、読んでくれ! としか私には言えませんが(笑)、そんじょそこらの漫画家では絶対に出せないとてつもないエネルギーを感じる漫画であることは間違いありません! 受け流せません。最優秀おめでとうございます!

 まだ終わらない! 五つ目の最優秀賞は! ゆざきさかおみさんの『作りたい女と食べたい女』です!

 グルメ漫画が好きなのもので、見かけるとつい手にとって読んでしまいます。この漫画も最初はそんな感じで購入しました。主人公は料理を作るのが好きな野本さん。SNS映えする料理を作っては投稿して満足しているが、実は本当に作りたいのは“デカ盛りグルメ”!! そんな欲を満たしてくれるのが同じマンションの隣の隣に住む春日さんでした。

 ひょんなことから仲良くなり、野本さんが作るどんなデカ盛り料理でもペロリと平らげてくれる春日さん。この需要と供給コンビが織りなす、料理を作る、料理を食べる、この関係性が見ていて超気持ち良い。

 そしてこの漫画が素晴らしいのは、単純なグルメ作品としても良作なうえ、そこに女性同士の恋愛という要素が入ってくるところです。このさじ加減が、とても絶妙なんです。

 私は一巻を読んだときはその要素に気づかず、2巻でその要素が少しづつ入ってきて、そこで初めて気がつきました。BLに比べると、これまで漫画の世界ではあまり描かれてこなかった女性の恋愛。そこにチャレンジしていることがまず素晴らしくて、知識があまりない読者に対して凄く優しいスピードで教えてくれているんです。そこに感動すら覚えます。

 最近発売された3巻はよりそこについて掘り下げるシーンがあります。繊細なテーマを扱うエピソードでは、まず最初に「今回のお話には以下の表現が含まれます」と、読む前に優しく教えてくれます。作者と編集がこの作品を大切に大事にしているのが伝わってくるようで、本当に良い作品に出会えたと思えます。この作品は……受け流せません!

 もう一つ、最後にもう一つだけ言わせてください! 最後の最優秀はとよ田みのるさんの『これ描いて死ね』だー!!

 とよ田先生の漫画はどの作品もおもしろ優しくて大好きです。『これ描いて死ね』は、離島に住む高校生の女の子が漫画が大好きな気持ちを目一杯広げていくのを、とても素敵に描いてくれている漫画です。

「この曲を聞くと上京し出した頃を思い出して胸に刺さる」

 そんな曲ってありませんか?

 私ムーディ勝山でいうとケツメイシの「東京」とか、BEGINの「防波堤で見た景色」なんですけど、この漫画は今の仕事を始めた頃の初期衝動のようなものを思い出させてくれます。夢に向かって日常がキラキラし出した頃です。一話一話、最初のカラーのところの絵もすごく綺麗で、全編カラーにして欲しいぐらいです。カラーで絵を描かせたら業界トップクラスに素敵な絵を描かれる先生じゃないでしょうか?

 そして、タイトルが表すように、漫画を描くときには「殺意」が必要だ! という表現があるんですが(笑)、実はこの気持ちすごく分かります!

 私もお客さんに対して「笑って殺す。笑い死にさせてやる!!」そんな気持ちで取り組んでいた時期がありました。究極の考え方だと思うんです。笑って泣かす、それよりも強い「笑って死ね!」。私もそう思っていました(笑)。

 登場人物たちが殻を破って一歩踏み出す瞬間の描き方には、つい泣きそうになります。この先も受け流せません! 最優秀賞おめでとうございます!

 今年も素晴らしい漫画にたくさん出会えました。漫画家のみなさまいつもありがとうございます! そして読者のみなさま、少し早いですが良いお年を! 私は来年も受け流していくので、引き続きよろしくお願いします。チャラッチャチャラッチャ~♪

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