■楽観的な性格は処世術のようなものかもしれない
そもそもデンジは父親が残した多額の借金を抱え、まともに食事もできず、義務教育すら受けられないような過酷な人生を送ってきた。彼が命をかけて戦う理由は、世界のためでも、大義のためでも、ましてや仲間のためでもない。上司のマキマに拾われてからようやく手に入れた、自分の“普通の生活”を守るためだ。
楽観的で深いことは考えない性格も、つらい生活のなかで彼が身につけた処世術のようなものだろう。同じく第4巻収録の第29話にて、仲間が死んでも悲しめない自分について一瞬悩みかけたものの、「ま! シリアスな事ぁ考えなくていっか!」と片づけてしまうところなんて、もはや潔い。ここでも「楽しくねえ事考えても楽しくねえだけだからな!」と発言しており、いいのかそれで……?と思ってしまいつつも、そのブレなさには感心させられる。
そんなデンジの姿勢は、デビルハンターとして働くうえでも役に立つ。第2巻第14話から、彼はアキやパワーをはじめとした仲間たちとともに悪魔駆除のためホテルに向かうのだが、悪魔の力によって建物の8階に閉じ込められてしまった。なぜか時間も止まり、このままでは一生出られないかもという事態に追い込まれた面々は、多かれ少なかれ焦ることになる。しかし、デンジは違った。
彼は強がりでもなんでもなく「すげえ! 寝放題じゃねえか!!」と、喜びの表情を見せる。そして実際、ホテルのふかふかベッドで一瞬にして眠りに落ち、あとで起こされるまで爆睡していた。寝る前、このまま閉じ込められる可能性について「そうなるかもしれねーし ならねえかもしれねーだろ?」と言い放っており、新人なのに大物感が半端ではない。「時間の止まったホテルに閉じ込められる=寝放題」というポジティブさや単純な思考回路は、見習いたいところだ。
最後に、単純といえば、日常シーンでぽろっと出てきた「俺は俺の事を好きな人が好きだ」発言も忘れがたい。マキマにすべてを捧げると誓いつつ、魅力的な女性が出てくるたびにすぐなびいてしまうデンジ。そんな彼がとある少女と出会った際、心のなかでつぶやいた言葉なのだが、なかなか真理を突いているように思える。読者のなかには、思わず「わかる」と共感してしまった人も多いのではないだろうか。
第2部連載・アニメ化でますます話題の『チェンソーマン』。今後デンジの口からどんな新名言が飛び出すのか、そして今回紹介した名言がアニメでどう熱く語られるかにも注目していきたいところである。