■第1位:「こっぱみじん」150億円

 ぶっちぎりの第1位に輝いたのが「こっぱみじん」(秋田文庫版11巻収録)で、その請求額はなんと150億円。さらに金額だけでなく、ブラック・ジャックがおこなった手術の内容も常識外れのものとなっている。

 ある国の大統領夫人から「夫を守ってやってください」という依頼を受けたブラック・ジャック。その国では長らく戦争が続いており、数多くの国民が苦しみ命を落としていた。しかし独裁的な大統領は彼らの苦しみには目もくれず、自分のことばかり。当然命を狙われることも多かったため、いつ大怪我をしても治療をしてほしいというのだ。

 ブラック・ジャックは150億円という大金を要求し、治療するのは“こっぱみじんになったときを除く”という条件で契約する。そんな中、墜落事故で重体になった子ども40人が宮殿に運ばれてくるが、大統領は怒り狂って受け入れを拒否。それに反対するブラック・ジャックを射殺しようとしたところを、国を憂う実の息子に殺されてしまった。

 その後ブラック・ジャックは40人の子どもたちを並べ、1時間でまとめて手術するという神業をやってのける。なかには内臓や手足を失う大怪我を負った子もいたが、ブラック・ジャックは亡き大統領の身体を(勝手に)移植に使うことで全員を救った。

 大統領の遺体は彼の手によって“こっぱみじん”になり、したがってブラック・ジャックは契約を破ったことにはならない。大統領に見捨てられるはずだった子どもたちも救えて万々歳である。

 ラストでブラック・ジャックが言った「大統領ははじめて人々のために充分お役にたったんです」というセリフもあわせて、スカッとするエピソードだった。

 

 天才的な手術の腕前を持ち、法外な報酬を請求することで知られるブラック・ジャック。今回はそのなかでも、とくに桁違いの高額請求について紹介してきた。

 ただし記事内で取り上げたエピソードだけ見ても、得た金を患者のために使ってしまったり、自分のためだけの請求ではなかったりと、単に強欲な人間ではないことがよくわかる。

 ぜひこの機会に作品を読んで、彼の一筋縄ではいかない魅力を堪能してみていただきたい。

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