■何のために? ひとりで喧嘩ができる「けんかてぶくろ」

 コミックス10巻「ねがい星」のエピソードでは、ドラえもんの持つ“ポンコツひみつ道具”のなかでも、とくに役に立たないと名高いひみつ道具が登場する。それが「けんかてぶくろ」だ。

「けんかてぶくろ」は、ドラえもんが転んで四次元ポケットの中身を散乱させてしまったなかにあった。興味を持って手にはめてみたのび太だが、“ひとりでけんかができる”という「けんかてぶくろ」の効果によって、自身にボコボコに殴られてしまうのだった。

 使用すると自分自身を殴り続けるという「けんかてぶくろ」。果たしてひとりで喧嘩をする機会があるのかすら不明だが、ドラえもんはこの「けんかてぶくろ」のように“役に立たないひみつ道具”をついつい買ってしまう悪いクセがあるのかもしれない……。

 とはいえ、この「けんかてぶくろ」、コミックス37巻でも再登場していて、タイムマシンでやってきたのび太自身に攻撃するために使われていた。使い方によってはまったく役に立たないというわけではないようだが、それにしても「なぜ買ったんだろう?」と、やっぱり疑問は晴れない……。

 未来デパートでひみつ道具を仕入れているドラえもん。「ぼくのだす道具は一回限りの使い捨てが多いんだ。安いからね」と、安価なものを選んで購入していることをコミックス第45巻の作中で明かしていたが、彼は野比家の両親からもらうお小遣いでやりくりをして、ひみつ道具を購入しているらしい。

 安い値段でひみつ道具を仕入れてくるドラえもんだからこそ、たまに使用用途がよく分からない“ポンコツひみつ道具”を買ってしまうのではないかと思う。よく分からない機能や壊れやすいという点で、たびたび役に立たないと言われてしまうひみつ道具の数々だが、思わずくすりと笑ってしまうようなくだらなさも本作の見どころの1つなのかもしれない。

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