■オカルト要素の強いストーリー

 全体的にはコメディタッチで描かれていることが多いが、なかにはオカルト要素の強い不気味なストーリーもある。

 たとえば、「No.004 From the darkness」では、林間学校を抜け出して無人の山小屋でたむろしていた中学生4人が、女子生徒が同級生の誰かに食べられるのを目撃してしまうところからストーリーが始まる。4人は自衛のため犯人を探ろうとするが、一人姿を消し、また一人いなくなり、残すは2人だけになってしまう。そして知人から紹介されたつぶれかけの精神クリニックで、地球に来ている宇宙人の実態を知ることになる……。

 最後は“生きる”ということや“種をつなぐ”ということ、“違う種族との共存”など、重いテーマを残して終わる。同時期のジャンプでは、同じくオカルトジャンルの『地獄先生ぬ~べ~』が連載されていたが、そちらは「鬼の手」を持つ教師が幽霊や妖怪と戦いながら生徒を守るというジャンプらしい作品だ。それに比べると、こちらはジャンプというより海外ドラマ「X-ファイル」に近いような気がする。一見万事解決で終わるのだが、どこかざらりとしたものが胸に残る。これを当時のジャンプで掲載したのか……と思うと、たしかに異例ではある。

 ちなみに、このストーリーにはオチがついている。最後にちゃんと「そういうことか!」と思わせてくれるところも、また冨樫氏らしくて面白い。

 

 当時のジャンプにしては、何から何まで異例づくしの『レベルE』。全3巻と短いが、ギミックに凝っていたり、シュールなギャグがあったり、いろいろと考えさせられるストーリーもあったりと、冨樫氏らしさがぎっしり詰まっている。

 また余談ではあるが、“予想の斜め上を行く”といったような表現は、この『レベルE』から広まったという(三省堂国語辞典8版より)。バカ王子の護衛隊長クラフトが、バカ王子について「あいつの場合に限って 常に最悪のケースを想定しろ」「奴は必ずその少し斜め上を行く‼」と部下に言ったことが始まりだ。

 このあたりのエピソードも含めて、何から何まで面白い。まだ読んだことのない人にはぜひ読んでもらいたい作品だ。

  1. 1
  2. 2