『カナカナ』佳奈花や『うしおととら』さとりも…“憧れの能力”には苦労がつきもの? 心が読めるキャラ3選の画像
少年サンデーコミックス『うしおととら』第1巻(小学館)

「心が読める」なんとも素晴らしい能力だ。空を飛ぶのと同じくらい、誰もが一度は憧れてしまう能力といえよう。もちろん、現実的にはおそらく不可能なのだが、漫画では時折「特殊能力」として描かれている。とはいえ、実際に心が読めるとしたら、決していいことばかりではないのだ。

 令和の時代には『SPY×FAMILY』(集英社)に登場するアーニャが有名だが、彼女以外にも心が読めるキャラが漫画にはたびたび登場する。そこで“心が読める漫画キャラ”を、彼らの苦悩も含めて解説していこう。

■たった5歳なのに独りで生きるように諭される『カナカナ』佳奈花

 まずは、西森博之氏の『カナカナ』(小学館)に登場する主人公・佳奈花だ。

 彼女は両親を事故で失ったため祖母に育てられるのだが、たった5歳なのに能力のために幼稚園にも行っていない。それどころか心が読めることを知られてしまい、祖母からは独りで生きるようにと諭されてしまうのだ。まだ5歳なのに……同世代の娘がいる筆者からすれば、その時点で言語道断だ。

 佳奈花は祖母の死後、親戚をたらい回しにされるだけでなく、能力を知った親族の沢田に目を付けられてしまう。この男は佳奈花の祖父の実弟の嫁の子どもという他人同然の関係だが、佳奈花の能力を賭博で発揮させようとするふざけた男だった。

 能力を悪用されそうになった佳奈花は沢田のもとを逃げ出し、左目のあたりに傷がある強面の元ヤン・日暮正直と偶然遭遇する。日暮は実直過ぎる性格ゆえか、なぜか心が読めない。さまざまな人間の心理を見てきた佳奈花にとっては衝撃的で、それと同時に安心感を覚える相手だった。見た目は怖くとも、子どもは本能が働くのだろう。

 それにしても、“こんな子どもはいるのだろうか……”と思うくらい、佳奈花はしっかり者の5歳児だ。独り立ちできるようにと英才教育を受けてきたとはいえ、本や新聞を読んだり、消費税の計算までもできてしまう。

 とはいえ、現代の幼児たちは驚くほど言葉を知っているのも事実。6歳児である筆者の娘も「はあ、イケメンって彼女がいるんだよね~」なんて呟いていたが、心が読めること以外は佳奈花もある意味リアルな5歳児なのかもしれない。

■知りたくないのに思念が入ってくる…『サトラレ』にかかわる人たち

 周囲の人に自分の強い気持ちが「思念」として伝わるという架空の病気「先天性R型脳梁変性症」を描いた、佐藤マコト氏の『サトラレ』(講談社)。本作は、心が読めるのが主人公ではなく、“周囲の人に対して”という逆転の発想が見事で感動を呼んだものだ。

 この作品は主人公はもちろん、「サトラレ」にかかわる人たちがみな主役といえる。サトラレは国益にかかわるほどの天才ばかりなのだが、自身が「サトラレ」だと知ってしまうと自分の思考が周りに知られていることを苦痛に思い、精神崩壊を招くおそれがある。そのため、彼らにバレないように政府主導でサトラレを守る対策委員会があったり、護衛を付けるなどの法律が制定されていたりもする。

 本作のなかでは、第一話から登場するサトラレの一人、西山幸夫が印象深かった。周囲に自分の考えや思いが伝わるのは想像以上につらいことだ。「サトラレ」という言葉は知っていても、西山は自分がそうだとは知らない。

 真面目な西山は恋に盲目状態で研究が疎かになっていたため、わざわざ失恋させようと政府が身代わりの恋人を用意させていた。警護の女性担当者の小松洋子をはじめ、西山に片思いされた川上、その偽恋人役の男を含めてレストランまでドライブするも、心で泣いている西山の感情が分かるので3人ともどこか複雑な心境だった。

 西山が発する思念「とにかく終わった やさしそうで ヨカッタね 川上さん」。これは聞いているほうもつらいだろう。しかし、西山を騙すつもりがなくても、政府の方針に逆らえば逮捕されるため、仕方がないのだ。当の西山が一番かわいそうなのだが、実際、誰かの思念が聞こえるとしたら……とつい、考えてしまった。

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