映画『ドラえもん』での“あるある”を考察 “ジャイアンが“優しいいいヤツ”になる”、“出木杉が冒険に同行しない”のはなぜ?の画像
映画『ドラえもん』のび太の宇宙小戦争2021より

 藤子・F・不二雄さん原作の国民的アニメ『ドラえもん』。ドラえもんという22世紀の未来からやってきた“ネコ型ロボット”と、小学生の野比のび太が出会うところから物語は始まった。

 のび太を中心に巻き起こるトラブルを、ドラえもんのひみつ道具で乗り越えていくのが物語の主軸となっていて、四次元ポケットから飛び出す多種多様なひみつ道具には子どもだけでなく大人たちもワクワクさせられてしまう。

 ところで、テレビアニメだけでなく映画も人気の本作。宇宙や白亜紀時代などを舞台に繰り広げられる大冒険は圧巻で、彼らの冒険を見ようと映画が公開されるたび多くのファンが劇場に駆けつけている。

 そんな映画『ドラえもん』だが、実は映画だからこそよく見られる演出があることをご存じだろうか? 今回は、その“あるある”について考察したい。

■ガキ大将・ジャイアンが“優しいいいヤツ”になる

 のび太のクラスメイト、剛田武ことジャイアン。彼はいわゆる“ガキ大将”で、漫画やアニメではのび太に対して乱暴な言動を取ることもある“いじめっ子キャラ”だ。

 しかし、ジャイアンは映画では「優しいいいヤツ」として描かれることが多い。彼の持ち前の“頼もしさ”が存分に発揮され、のび太たちがピンチに陥ったとき、とても頼りになる存在なのだ。

 その理由を考えてみると、映画には明確な「敵キャラ」が登場するため、ジャイアンを“悪者”や“乱暴者”にする必要がないからではないかと思う。

 映画『ドラえもん』では、登場する敵キャラによってメインキャラがピンチに陥る展開が多い。普段ならのび太を困らせる一番の存在であるジャイアンだが、映画では地球を破壊しようとするなど悪行を企む「敵キャラ」がいるため、いじめっ子もいじめられっ子も関係なく“みんなで一丸となって敵キャラに立ち向かう”という図式が成立するのだ。

 さらに、ジャイアンが優しくていいヤツになることで、普段とのギャップも楽しめるだろう。物語により深みが出る効果もあるのかもしれない。

■のび太の恋敵・出木杉くんは冒険に同行しない

 出木杉英才こと出木杉くんは、のび太のクラスメイトの優等生キャラだ。精悍な顔立ちで文武両道、品行方正、しかも性格も良くモテモテ……とパーフェクトな彼は、たびたびのび太の対抗馬のような役割で登場する。

 のび太の想い人のしずかちゃんが出木杉くんのことを褒め称えるたびにのび太が対抗意識を燃やす、というのが、本作ではお決まりのパターンだ。

 ある意味のび太のライバルでもある出木杉くんだが、彼は映画ではほとんど活躍しない。……というより、登場はしても冒険には同行しないのだ。その理由は、やはり彼が“優秀すぎるから”ではないかと思う。

『ドラえもん』の映画において「大きな困難」は非常に重要な要素である。この困難をドラえもんをはじめ、小学生であるのび太やジャイアン、スネ夫、しずかちゃんが知恵を絞り、友情の力で乗り越えていくのが本作の見どころのひとつ。

 しかし出木杉くんは小学生らしからぬ豊富な知識量、さらに冷静な判断を下すことができるため、待ち受ける困難を簡単に乗り越えることができてしまうだろう。「出木杉が冒険に参加すると“一瞬で”映画が終わる」なんて言葉がファンからは挙がることもあるようだが、彼はやはり“デキスギ”なのだと思う。

 それにしても、ポテンシャルが高いことで映画の登場が少ないというのは、ちょっと皮肉な気もするが……。

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