『機動戦士ガンダム』には魅力的な女性キャラが数多く登場し、主人公・アムロ・レイは彼女たちとの出会いにより成長していく。ガンダムファンならすぐに名前が出てくる、セイラ・マス、マチルダ・アジャン、ララァ・スンなどは、アムロに影響を与えた代表的な女性たちと言えよう。しかし、あまり注目されていないながらも、アムロの心に少なからぬ影響を与えた女性たちもいる。今回はそんな女性たちを紹介していこうと思う。
■イセリナ・エッシェンバッハ…自分の気持ちに一途な芯の強い女性
イセリナ・エッシェンバッハは、ザビ家の末弟ガルマ・ザビと恋仲にあった女性である。父はジオンの支配下にあるニューヤーク前市長のヨーゼフ・エッシェンバッハ。ジオンのことを憎みながらも、市民の保護のためにニューヤークに残ったこの父に、イセリナはガルマとの交際を激しく反対されている。言うなれば「宇宙世紀版ロミオとジュリエット」のような設定だ。
しかしそんな逆境にもめげず、ガルマを慕い続けるイセリナ。ガルマがシャアの口車に乗ってホワイトベースに攻撃を仕掛けたときには、自家用ジェットに単身乗り込んでガルマのところへ向かおうとする。周囲に引き止められ父の元に連れ戻されるが、「お父様にだって、私を自由にする権利はないわ! 私は自分で自分の道を選ぶ権利が!」と反抗。世間知らずのお嬢様であるものの、自分の気持ちに一途な芯の強い性格が垣間見える。
ガルマ戦死の訃報を父から伝えられたイセリナは、ガルマの部下であったダロタ中尉に自分をガウ攻撃空母に乗せるよう直訴し、仇討ちを果たそうとする。アムロのガンダム、リュウのガンキャノンの攻撃を受けながらもガンダムの盾を溶かす寸前まで追い詰めるが、とどめを刺すことができず、自ら操縦桿を握り皮肉にもガルマと同じく命を賭しての特攻を仕掛けることに。
イセリナの決死の特攻により操縦不能になったガンダムから出たアムロは、ガウから出てきたイセリナと初めて対面する。イセリナはアムロに銃を向け復讐を果たそうとするが、そこで力尽きてガウから転落、その短い生涯を終える。遺体はアムロたちによってその場で埋葬された。
「何ていう名前の人なんだろう……。僕を仇と言ったんだ」
イセリナの亡きがらを見ながらつぶやくアムロ。敵機に捨て身の特攻を受け、そこから出てきた若い女性が目の前で死ぬというショッキングな光景を目にしたアムロは、その後、重度のノイローゼになってしまうのだった。
■クラウレ・ハモン…ランバ・ラルを公私で支えた優秀なパートナー
クラウレ・ハモンは、ランバ・ラルの内縁の妻である。戦地に向かうラルと行動を共にし、ラルの不在時には代わりに艦内の指揮を執ったり、ラルからの相談に的確なアドバイスを返すなど参謀的な役割も果たしている。第19話 「ランバ・ラル特攻!」では、砂漠で脱走したアムロを気に入り食事を奢ろうとしていることから、戦場で生き抜く男を見抜く目があるようだ。
ランバ・ラルが戦死したあとは「あんな心を寄せてくれた人のために、よしんば砂漠で散るのも後悔はない」と、残された少ない戦力で復讐を決意。大量の爆弾を積んだカーゴをホワイトベースに特攻させ、ガンダムの注意をそちらに向けた隙にマゼラトップで背後を取りとどめを刺す寸前まで追い込んだが、リュウのコアファイターに体当たりされて絶命した。
砂漠の街で妖艶な雰囲気を漂わせ登場したハモンは、マチルダ中尉同様にアムロが心惹かれた「大人の女性」でもあった。マゼラトップに後ろを取られた際にそのパイロットがハモンだと気づくアムロ。自分が気になっていた女性に追い込まれ戸惑うのも束の間、目の前でマゼラトップに味方のコアファイターが突っ込んでいく。後にそのパイロットがリュウであったことを知ったアムロの絶望感は計り知れない。