■かなり手厳しいドラえもん流の褒め方
コミックス15巻「ナイヘヤドア」では、のび太が独立しようとする様子が描かれている。
近ごろ、よく貯金をしているのび太にドラえもんが理由を聞くと、なんでも、親に頼りっぱなしの人生だから情けない……独立して自分だけの力で生きてみたいとのび太は明かす。
その考えを聞き感心したドラえもんは、「えらい!!」と背中を叩いて褒めた。そして「いくじなしであまったれで、気も頭もよわいきみが、よくそこまで決心した!」と、またしてもグサグサと突き刺さる言葉をかけるのだ。
口を突き出して不満気な顔をするのび太だったが、ドラえもんは「力をかすからやれるだけやってみな」と後押しし、ひみつ道具「ナイヘヤドア」を出す。これはなにもない壁に貼り付けるだけで部屋ができるというもの。
とあるアパートの3号室と5号室の間に「ナイヘヤドア」を貼り付けて部屋を作ってあげるドラえもん。家出のように荷物を持ち出してきて、いざ独立したのび太だったが、ご飯の用意や洗濯などを自分でやらなければならないことに不自由さを感じていく。さらにママに家出したことを気付いてもらえず、次第に寂しさを感じ、最終的にのび太は自分の家に「ナイヘヤドア」を貼り付けるも、いつまで経ってものび太がいなくなったことにママは気付かない……というオチがついていた。
ママの鈍感っぷりにも驚きであるが、やはりドラえもんの毒舌は手厳しいと思った次第だ。
ドラえもんが毒舌を吐くとき、なぜか普段のだらしないのび太とはひと味違った展開が待っていることが多い気がする。のび太をしっかりさせて一人前の大人にするという本来の目的を少しずつ達成できてドラえもんも嬉しいはずなのに、どこか素直に認めることができないのかも?と思ってしまう。
だが、こうしたドラえもんの少しひねくれたような性格も可愛らしく、魅力的なキャラクターとしてさらに愛着が湧いてしまうのも本当だ。実に奥深い『ドラえもん』の毒舌に、今後も期待したいと思う。