漫画やアニメに登場する「悪役」たちは、さまざまな理由・背景から悪事に手を染めていくが、一方で読者や視聴者からすると「えっ、そんな理由で……?」と、耳を疑ってしまうようなとんでもない理由で凶行に及ぶキャラクターも存在する。
そこで今回は、主人公に立ちはだかる宿敵たちが悪党になった「とんでもない理由」について、いくつか紹介していこう。
※以下には、『クレヨンしんちゃん 爆発! 温泉わくわく大決戦』、『ドラゴンボール』、『からくりサーカス』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■些細な「こだわり」でそこまでやる!?『クレヨンしんちゃん 爆発! 温泉わくわく大決戦』Dr.アカマミレ
1990年から連載が開始され、今もなお多くのファンを持つ臼井儀人氏の『クレヨンしんちゃん』。劇場版にはさまざまな悪役が登場し、あの手この手で世界征服を企む。
なかでも、1999年に公開された劇場映画シリーズ7作目『爆発! 温泉わくわく大決戦』に登場するDr.アカマミレこそ、あまりにも独特な理由からテロ行為を繰り返していた人物だ。
Dr. アカマミレは「YUZAME」と名付けられた組織のリーダーであり、温泉の源泉を破壊したり、巨大ロボットで暴れたりと「風呂嫌い」という理由だけではあまりにも行き過ぎた破壊行為を繰り広げる。
筋金入りの「風呂嫌い」な彼だが、実はかつては非常に風呂好きな青年であり、常連の銭湯には必ず一番乗りで訪れるほどであった。そんな彼のささやかな「こだわり」は、現役時代の長嶋茂雄の背番号「3番」の下駄箱を使うというものだった。
しかし、この3番の下駄箱の鍵を何者かが持っていってしまったことで、彼は非常に大きなショックを受ける。すなわち「好きだった3番の下駄箱が使えない」という理由だけで彼は風呂嫌いになり、そしてテロを起こすまでになってしまった……ということなのである。
もはや風呂が嫌いというより、「自身のこだわりを汚された」というあまりにも些細な理由に、ほかのキャラクターたちも呆れるしかなかった。世界征服を目論むというには、なんとも身勝手な、驚くべき理由である。
■赤ん坊のときに抱いたあまりにも純粋な憎しみ『ドラゴンボール』ブロリー
1984年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された、鳥山明氏の大人気漫画『ドラゴンボール』は、のちに数々の映画作品が誕生し、いずれも高い人気を獲得している。そのなかに登場する「伝説の超サイヤ人」ことブロリーは、あまりにも些細な理由で主人公・孫悟空と死闘を繰り広げることとなる。
ブロリーは悟空やベジータ同様、数少ないサイヤ人の生き残りの一人だ。その戦闘能力は圧倒的で、破壊力、耐久力、スピード、どれをとっても作中最強クラスのキャラクターである。
そんなブロリーだが、劇中では終始、孫悟空ことカカロットへの強い憎しみに突き動かされ、執着し続けている。その原因はブロリーと悟空が生まれてから間もない幼少期にあった。
ブロリーと孫悟空は同じ日に生まれたのだが、二人は隣り合った保育器に入れられ、育てられていた。その際、悟空の泣き声が非常に大きく、ブロリーはこれに驚き、泣かされていた。さらに、ブロリーは生まれながらに戦闘力が1万もあったのだが、対して戦闘力がたったの2しかなかった悟空に安眠を邪魔されたことも、プライドに障ったのかもしれない。
この幼少期の記憶がそのまま悟空への強い憎しみに変わり、彼はかつて自分を泣かせた相手を滅ぼすため、暴走を続けていくこととなる。
ちなみに、2018年に放映された『ドラゴンボール超 ブロリー』では、原作者である鳥山明氏によってブロリー自体の設定が再構築されたため、このエピソードはあくまで旧映画版限定の設定となる。
どちらにせよ、幼少期に抱いた純粋な敵意が数々の殺戮劇を生んでしまった、なんとも恐ろしいキャラクターだろう。