■山王工業高校・沢北栄治「やられたらやり返しゃいーんすよ」
2年間無敗でインターハイ3連覇をなしとげた、高校界の絶対王者・山王工業。その山王のエースが、沢北栄治だ。沢北は名実ともに日本の高校界No.1プレイヤーではあるが、それゆえ日本には相手になる選手がおらず、試合中に集中力を欠くことが多い。
しかし、インターハイの湘北戦でのこと。山王は湘北に約20点差をつけてリードしていたものの、桜木と流川の活躍によってジワジワと巻き返される。この時点ではまだ流川をおちょくるだけの余裕を見せていた沢北だったが、闘志に火がついた流川は止まらない。桜木が外したシュートをそのままゴールにダンクで叩き込むスーパープレイを見せ、その差を8点にまで縮めた。この流川のダンクが、沢北のスイッチを入れることになる。
キャプテン・深津一成から「あの1年生コンビをのせると ちょっと面倒になりそうだピョン」「2人を抑えるかどーかにかかってるピョン」と言われた沢北は、「やられたらやり返しゃいーんすよ……3倍にしてね」と答え、実際にそこから周囲との圧倒的な力の差を見せつけていくのだった。
実力も名声も流川より上、あの仙道ですら中学時代に勝てなかったほどの絶対的プレイヤーだが、ちょっとでもプライドにさわる相手に対しては一切手加減しない。むらっ気の目立つスーパーエースが、それ以上に負けん気の強さを表に出した印象深いセリフだ。
こうして振り返ると、とても高校生とは思えないほど成熟したエースたち……。そのセリフだけで、見ているこちらまでメラメラと闘志が湧いてこないだろうか。
連載終了から26年の歳月を超え、来る2022年12月3日、いよいよ新作映画の『THE FIRST SLAM DUNK』が公開される『SLAM DUNK』。しかし1カ月を切った現時点でも、ストーリーの詳細はほぼ明かされていない。仙道の決めゼリフではないが、「まだあわてるような時間じゃない」ということなのだろう。
映画でもあのころと変わらない彼らの熱い姿を拝めることを期待して、これまでの『SLAM DUNK』を振り返りながら、じっと待つことにしたい。