■『おじゃる丸』の転生ものに『クレしん』の「嗚咽の八重歯」

『ドラえもん』以外にも、最近になって明らかに他作品を意識した展開をみせる国民的アニメがある。

 1998年より放送されているアニメ『おじゃる丸』もそのひとつ。11月7日に放送された「転生したら シャクじゃった件」は、自分と同じシャクの姿の友だちがほしいというシャクを元気づけるため、おじゃる丸が森の呪文屋に頼んでシャクに変身、シャクとの「シャクライフ」を過ごすという内容だったが、タイトルからして今流行しているアニメのジャンルである「転生モノ」を意識したものだった。

 このほかにも同作では、大人だからこそ楽しめそうな挑戦的なネタも多く、2016年にはおじゃる丸が17歳の中性的な美少年に成長する内容が放送された。このとき、17歳のおじゃる丸の声優を務めたのは、女性から圧倒的な人気を誇る人気声優・小野賢章なのだから、なおさらSNSは騒然となった。シリーズ制作統括の吉國勲氏は「実は第19シリーズはいろいろなことを仕掛けようとしている」と語っており、長寿番組だからこそ、ファンが飽きない展開を意識したのだろうと思われる。

 実際に、「おじゃる17」シリーズは人気となり、2022年3月の放送にも登場している。

 国民的アニメの中でも、『クレヨンしんちゃん』は他作品のパロディが多いことで有名だ。『美少女戦士セーラームーン』や『名探偵コナン』『ルパン三世』などの有名作に加え、近年で話題になったのは『鬼滅の刃』のパロディ。

 それは2020年に放送された「借りパク注意だゾ」というエピソードに登場したネタ。まつざか先生が上尾先生からの借り物であることを忘れて漫画をフリマサイトに売ろうとするという話で、その漫画のタイトルが「嗚咽の八重歯(おえつのやえば)」。

 着物姿の八重歯の生えた少女が泣いているイラストが表紙で、どことなくロゴのデザインも本家を思わせるものだった。表紙の少女も、禰豆子に見えなくもない。

『クレヨンしんちゃん』ならではのハイセンスな遊び心に、ネット上では大きな話題を集めた。

 このように、いつもはパロディネタにされる側である国民的アニメがいざ他作品をパロディ化する回はかなり面白いものが多いようだ。今後も、見逃せないおもしろパロディが登場することに期待してしまう。

  1. 1
  2. 2