ガンダムシリーズは宇宙世紀やアナザー作品を問わず、細かな設定や壮大な世界観が多くのファンを惹きつける魅力となっている。本編とは別に、商品化企画のために誕生した「モビルスーツバリエーション」(以下MSV)もその一つだろう。
MSVにはザク強行偵察型やザクマリンタイプなど、本編には登場しないが兵器としての現実性、細かな設定があることも特徴だ。そのため、派生機や特化型機、プロトタイプ(試作)機が数多く存在する。今回はモビルスーツ開発の系譜の原型である「プロトタイプ」にスポットを当てて紹介していく。
■機体に黒色があしらわれた「プロトタイプガンダム」
型式番号RX78ー2といえば『機動戦士ガンダム』でアムロ・レイが搭乗したガンダムでおなじみだが、今回紹介するのは、黒とグレーを基調とした「RX78ー1プロトタイプガンダム」。文字通り、RX78シリーズの1機目である。
宇宙世紀0079の一年戦争開戦当初、地球連邦軍はジオン公国軍のモビルスーツの戦力に圧倒されていた。戦局を一変させるために科学技術の粋を集めて開発にこぎつけたのが、このプロトタイプガンダムである。
プロトタイプガンダムは『機動戦士ガンダム』第1話「ガンダム大地に立つ」にて、ザクの強襲を受けてサイド7で破壊されたことになっている。残ったパーツも機密保持のために焼き払われ、日の目を見なかったモビルスーツである。
設定資料として登場する機体のカラーリングは、RX78ー2のトリコロールカラーにはない渋さがあり、色合いのほかにも上腕部分の凹凸や、足首周りなどに微妙な違いがある。実戦投入されなかった幻のガンダム1号機……。その設定だけでもロマンあふれるモビルスーツと言えるだろう。
ちなみに。RX78ー3は小説版『機動戦士ガンダム』でアムロが乗り換えるマグネットコーティングが施されたGー3ガンダムのことを指す。ガンダムの型式番号であるRX78シリーズはRX78ー1からRX78ー8まで、全部で8機あるとされている。ゲームや小説を中心に設定や登場作品は増え続けているのだ。
■飛行能力テスト中に爆発した「プロトタイプグフ」
次に紹介したいのは「MS‐07Hグフ飛行試験型」だ。ジオンは一年戦争における地球でのモビルスーツの運用性の悪さに困り果てていた。そこでモビルスーツを飛行させる計画が立てられ、プロトタイプ機として登場したのがグフ飛行試験型だった。残念なことに飛行試験の最中、エンジントラブルを起こし空中爆発。計画中止となった幻のモビルスーツでもある。
この機体はMSVでありながら、映像化に優遇された機体だった。『機動戦士Zガンダム』第12話「ジャブローの風」において、接収されたグフ飛行試験型がジャブローに投入されている。『機動戦士ガンダム第08MS小隊』の最終話「震える山 後編」にはグフ飛行試験型の完成形MS‐07H8が登場。
マイナーなプロトタイプ機でありながら映像化に恵まれているのは、フォルムや色合いのかっこよさで、MSVの中でも人気があるからと言えるだろう。