■悟空のまさかの心停止も…

 続いては、90年代に大ヒットを記録し『週刊少年ジャンプ』の黄金期を牽引した鳥山明氏による『ドラゴンボール』から。

 地球のピンチとなるような強敵が次々と登場した同作だが、それまでどこかギャグテイストが強かったところから「本気の怖さ」を読者に感じさせたのはピッコロ大魔王が最初ではないだろうか。

 まず恐ろしかったのは、ピッコロが生み出した分身の魔族が名だたる達人たちを簡単に殺せる強さだったこと。直前までは第22回天下一武道会が行われており、天津飯との死闘を終えた悟空たちが和やかな時間を過ごしていた。そこで控室に戻ったクリリンがピッコロの手下であるタンバリンにあっさりと殺されてしまう。

 そしてその親であるピッコロが相当な強さで、「まだ半分の力も出しておらん」という状態にもかかわらず悟空は手も足も出ず。そしてエネルギー波を喰らい、心停止してしまう。

 この時点でかなり絶望的だが、それ以上に最悪の出来事が起こる。ピッコロがドラゴンボールを集めて「肉体の若さ」を取り戻し、そのうえ次の瞬間に神龍を殺してしまったのだ。ただでさえ強いピッコロが若返ったことで全盛期の力を取り戻し、さらに神龍が殺され死者の復活ができなくなった。

「これだ!! このあふれるパワー感だっ!! もどったぞ!!! 若返ったのだー!」と1ページ丸々使って描かれたピッコロ完全体。このときのピッコロの行動すべてに、誰もが絶望的な気分を覚えたはず。

 結局は、悟空が超神水によって潜在能力を覚醒させてピッコロの力を上回ることになったが、最後までどうなるのか分からない、まさにページをめくる手を止められない展開の連続だった。

 敵キャラによって絶望を感じさせられるのは、絶対に勝てないと思わせる力や雰囲気が伝わるからだ。だがそこから、わずかなチャンスを掴んで勝利を手に入れる。何度読んでも夢中になってしまう少年漫画は、やはり強敵なくしてはありえない。

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