■病児保育士が主人公のヒューマンドラマ『37.5℃の涙』

 椎名チカ氏『37.5℃の涙』は、病児保育士を主人公としたヒューマンドラマ。病児保育士とは、子どもが熱を出して保育所に預かってもらえないとき、保護者に代わって世話をする職業のことを指す。保育園に通うくらいのお子さんがいる方や、子育て経験のある方にはなじみがあるだろうが、それ以外にはあまり知られていないかもしれない。実際、筆者がこの作品に出会ったのは学生時代だが、当時は病児保育という言葉すら耳にしたことがなかった。

 主人公の杉崎桃子は笑顔を作るのが苦手で保育士をやめた経歴を持つが、愛情深い人物でもあり、さまざまな事情を抱える子どもやその親にまっすぐ向き合っていく。子どもたちはもちろん、桃子自身のドラマにも焦点が当てられている点が魅力的だ。

 保育現場のリアルや子育ての大変さなど、重たいテーマを扱っているが、全体としては心あたたまる物語である。子どもを育てる大変さを知っている方には、とくに刺さることだろう。

 働く親御さんたちの心強い味方である病児保育。今後、もっと幅広い人々が気軽に利用できるようになることを願うばかりだ。

 

 どんな職業にも人知れぬ苦悩や葛藤はあるだろうが、それでも頑張ろうと前を見続ける人々がいる。忙しい日々を送るなか、自分と同じように頑張っている人がいるという事実には勇気をもらえるはずだ。

 今日も一生懸命働くみなさん、お疲れ様です。たまにはゆっくり休んで、好きな作品をのんびり楽しんでみてくださいね。

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