■女好きだが実は一途…ラムへの想いが溢れるエピソード
あたるは基本的にすべての女性に優しいのだが、ラムに対しては少し手厳しい一面もある。彼女からの電撃など激しい愛情表現(!?)に反撃してのことも多いのだが、言い方を変えればラムはそれほどあたるにとって「大切な女性」だったのだ。
あたるはラムに対して「好き」と気持ちを表現することがない意地っぱりな性格だ。ラムがいてもほかの女性を口説き、女好きは一向に変わることがなかった。
しかし、ラムへの強く想いが分かるシーンがある。最終章で描かれた「ボーイミーツガール」では、再びあたるとラムの鬼ごっこが開催されるのだが、そのルールは、あたるが「好き」と言うか、ラムの頭のツノに触ることができたら決着がつくというもの。一方で、あたるが負けたら彼を含めたすべての地球人の記憶から、ラムたち宇宙人に関する記憶が消されるという、つらい条件が課せられていた。
あたるはラムに「好き」と言わないまま勝負は終盤にさしかかっていくが、ラムはあたるが自分の抜け落ちたツノを大切に手に握りしめていたことに気づく。そしてそれが、彼がもし負けたとき、ラムのことを忘れないためのものだと気づくのだ。
ラムは勝負の途中で、なかなか「好き」と言わないあたるに痺れを切らし、「ダーリンのバカっ!! 本当にうちのことを忘れてもいいっちゃ!?」と怒りを露わにする。それに対して、あたるが「忘れるもんかーっ!!」と叫ぶシーンは、本作のなかでも印象深いシーンだった。
あたるが頑なに「好き」と言わなかったのは、“勝負のなかで本心を言ってしまったら、本当かわからなくなる”と考えていたからで、彼がどれほどラムを一途に想っているかがよく分かる。
彼は当時は珍しかった「ツンデレキャラ」で、“好き”と言う気持ちを全力で表現するラムに対し、自分の気持ちを口に出すことはない。しかし行動や態度で分かってしまうところが逆に「嘘のない一途な愛情」を感じさせ、彼が女性たちを惹きつけてやまないゆえんにもなっているのではないだろうか。
“女好き”の印象が強い諸星あたるだが、その本質は紳士的で一途な男であることが分かる。普段の姿がだらしないだけに、ラムのピンチなどで駆けつけるときの彼のカッコ良さはより際立っていた。
女性たちを惹きつけてやまないあたる。彼がモテ男たる真髄は、今回紹介したエピソードに留まらず、本作の節々に散りばめられている。ぜひ本作を見返して、彼の魅力に触れてみてはいかがだろうか。