■厳しい戦時中に二人を引き受けてくれた『火垂るの墓』の西宮のおばさん

 最後に、1988年公開の『火垂るの墓』から。

 主人公・14歳の清太と4歳の妹・節子は、神戸大空襲によって家族と住む場所を失った。路頭に迷っていた2人を引き取ったのが、彼らの母親と「何かあったら助け合う」と、約束を交わしていた西宮の親戚のおばさんだ。

 おばさんは、未亡人として貧しい時代をなんとか生き抜いていたたくましい女性だ。筆者は子どものころに本作を見たとき、おばさんが清太と節子に厳しくあたる姿や、自分の子どもたちには少しいいものを食べさせる様子を見て「苦手だな」と感じていた。

 しかし、大人になってあらためて考えると、親を亡くして住む場所もない清太と節子を真っ先に引き取ってくれ、自分たちが食べるものもままならないのに衣食住を提供してくれた事実に注目してしまう。

 約束とはいえ、苦しい時代に子ども2人の面倒を見るのは大変だっただろう。清太と節子にあたりが強い「苦手なキャラ」だと感じていたおばさんだが、よく考えれば路頭に迷っていた2人を放っておけなかった優しい人かも?とも思えてならない。

 

 子どものころはちょっと苦手だったが、大人になった今だからこそ見方の変わったジブリキャラたち。当時ただ見るだけでは気づけなかった“いいところ”を発見することができた。

 このように「苦手」というだけで終わらないのがジブリ作品の素晴らしいところで、世界中にファンがいるゆえんなのではないだろうか。

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