スタジオジブリ作品というと、夢やファンタジーあふれる魅力的な作品の宝庫だ。出てくるキャラたちも多種多様で「あのキャラになってみたい」と、思わず感じたこともあるだろう。
その一方で、子どものころに少しマイナスなイメージを持ってしまったジブリキャラは少なからずいると思う。しかし、大人になってあらためて見返してみると、意外にもそういったキャラに対しての見方がガラリと変わってしまう場面もあるから不思議だ。
そこで今回は、子どものころはちょっと苦手だったけど「見方が変わったキャラ」を紹介していこう。
■年頃の女の子によく見られる言動だった?『魔女の宅急便』の“ニシンパイの女の子”
1989年公開の『魔女の宅急便』からは、“ニシンパイの女の子”を紹介しよう。この女の子とは、キキが宅急便の仕事で老婦人から依頼されたニシンパイを届けた孫娘のことだ。
キキはこのニシンパイを届けるまでに、さまざまなトラブルに見舞われた。老婦人のオーブンが故障してしまい、急遽、薪を使って焼くのを手伝ったり、運んでいる途中で大雨に降られたりと、“踏んだり蹴ったり”状態に。それでも彼女が奮闘したのは、依頼をしてくれた老婦人の人柄がとても良く、孫娘のためを思って贈り物をしようとした気持ちを汲み取りたかったからだ。
大雨に濡れないように必死でパイを守り、ようやく届け先にたどり着いたキキ。しかし、ニシンパイを受け取った女の子は「あたしこのパイ嫌いなのよね」と、ピシャリ。びしょ濡れ状態のキキはすっかり心が折れてしまい、その後体調を崩す始末だった。
このエピソードに関して、この孫娘を非難する声は多かった。しかし実は、宮崎駿監督は、この女の子の喋り方を気に入っているということが、金曜ロードショー公式ツイッターで“豆知識”として明らかとなっている。
監督は「あれは嘘をついていない、正直な言い方ですよ」「要らないっていうのに、またおばあちゃんが料理を送ってきて、みたいな」と。そして「ああいう事は世間にはよくある事でしょ」と言っていたようだ。
大人になって考えてみると、実際その通りだと思う。「本当に苦手で要らないもの」は少なからずある。この出来事を“ありがた迷惑”と表現する視聴者もいたようだが、見方によってはまさにその通りかもしれない。受け取る側の考え方はさまざまで当然なのだ。
本当にひどい子であれば、すでに祖母に対して文句の一つでも言っている可能性もあるが、“好意で贈ってきてくれたものだから”と、ひとまず受け取っているこの孫娘は、もしかしたら年頃の女の子によく見られる正直さゆえの言動だったのかもと、考えてしまった次第だ。
■自ら矢面に立つ頼もしさもある『千と千尋の神隠し』の湯婆婆
個性的な見た目のキャラクターが多いジブリ作品だが、そのなかでも子どもながらに苦手だったのが、2001年公開の『千と千尋の神隠し』に登場する湯婆婆だ。
湯婆婆は二頭身で、大きな頭に大きな目・鼻・口と人間離れした容貌をしている。それに加えて怒りっぽく、1度キレたら手に負えないほど暴れ回る魔女だった。
「働かないものは動物に変えられてしまう」という掟のある油屋の世界に紛れ込んでしまった千尋がハクの導きにより湯婆婆のもとを訪ねるシーンや、その後も千尋に何かと突っかかる姿に戦々恐々とした覚えがある筆者だが、今、考えてみると別の一面が見えたりする。
たとえば、特大の腐れ神が来訪した際のこと。油屋の従業員はみんな嫌がっていたが、湯婆婆は千尋に相手をさせている。泥まみれになり奮闘する様子を見て「汚いねぇ」と高みの見物をしていたが、千尋が腐れ神のある秘密を見つけたとき、その正体にいち早く気づいて真っ先に飛び込み、手を貸してくれたのも彼女だった。
実際、腐れ神は名のある河の神で、千尋が体に刺さっていた“トゲ”を抜いたことで本来の姿を取り戻す。立ち去る際には大量の砂金を残してくれており、それを見た湯婆婆は上機嫌で千尋を褒め称え、従業員にも彼女を見習うようにと伝えている。
また、そのほか湯婆婆はカオナシに襲われる千尋を見て「お客さまとて許せぬ!」と立ちはだかってくれるシーンもあった。
普段は厳しく、お金絡みで一喜一憂することも多い“守銭奴”だが、いざというときには自ら矢面に立つ頼もしさを持っている、優れた経営者でもある湯婆婆。千尋の甘えきった性根を叩き直したのは、少なからず彼女の手腕もあるのではないかと思う。