■「後にさらに加速度的に成長していくことになるのだが…それはもうちょっと先のことであった」
2つ目は豊玉戦から、ベンチでチームの戦いを見守る桜木のバックに流れた「このときから桜木は流川のプレイを目で追うようになる それに伴い後にさらに加速度的に成長していくことになるのだが…それはもうちょっと先のことであった」というナレーション。
全国大会前の合宿で2万本のジャンプシュートを練習した桜木は、自身の理想形が流川のシュートフォームにあることに気づく。そして、安西監督から「彼のプレイをよく見て…盗めるだけ盗みなさい そして彼の3倍練習する。そうしないと…高校生のうちには到底彼に追いつけないよ」との言葉をかけられ、桜木は初めて流川の実力に気づいたのだ。
この「後に」というところが気になる。というのも、豊玉戦の次には連載最後に描かれた山王工業との試合が行われているからだ。山王戦では、桜木のゴール下の駆け引きやリバウンドによってチームが救われるシーンが数多いが、これらですら彼の「加速度的な成長」の前触れのようなものだったのか。
結果的に、山王戦後に桜木がリハビリに励んでいるところで物語は終了しているため、リハビリ後に成長する未来が待っているのか「その後」が気になる伏線となっている。
■大栄学園、名朋工業や愛和学院などの猛者たちの登場
最後は、全国大会に出場を決めた猛者たちの登場シーン。陵南戦で勝利を収めて全国大会への出場を決めた湘北。桜木は、海南大付属高校の牧紳一と清田信長に誘われ、名朋工業対愛和学院の試合を観戦に行く。そこで、注目選手として登場したのが「愛知の星」こと愛和学院の諸星大。
さらに、そんな諸星を担架送りにし、桜木たちだけでなく読者にも強烈な印象を与えた名朋工業の森重寛。森重に関しては、全国大会前のジャンプシュートの合宿において、桜木が直接対決する夢を見ている。このことから、湘北対名朋工業の試合が描かれるのではないか、と予想したファンも多いのではないだろうか。
また、陵南高校の相田彦一に「要チェックや!」と言わしめた大栄学園の土屋敦も、全国大会の舞台で活躍するであろう人物と言える。
しかし全国大会において、彼らの出番が来ることはなかった。もし「その後」が描かれたとしたら、彼らの実力はどれほどでどういった活躍をするのだろうか。今なお気になってしまうキャラクターたちだ。
以上、山王戦の「その後」があるのではないかと期待したポイントを振り返った。人気絶頂で連載を終えた『SLAM DUNK』。気になるところはあるが、全てが描かれきれていない点もまた魅力のひとつだろう。
映画『THE FIRST SLAM DUNK』の公開はまもなく。劇場に行く前に単行本を読み直し、連載当時の熱を思い出しておくことをおすすめしたい。