1986年にファミリーコンピュータ用ソフトとして第1作が誕生し、2021年の「ドラクエの日」に最新ナンバリング作である『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』が発表。ゲーム『ドラゴンクエスト』のストーリーは、魔王を倒すために世界中を旅する冒険物語だが、さまざまなキャラが織りなす人間ドラマは初期のドット絵時代から重厚かつ鮮明に描かれてきた。
特に、哀しい物語を歩むことが多い『ドラクエ』のキャラクターは、いつまでもプレイヤーの記憶に残り続けるもので、好きなキャラの最期のシーンやセリフを詳細に思い出せるというファンも多いのではないだろうか。
そんなキャラクターの中から、今回は筆者が特に「死なないでほしかった」と感じたキャラクターを振り返りたい。
※以下には、ゲーム『ドラゴンクエスト5』『ドラゴンクエスト7』『ドラゴンクエスト11』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■『ドラクエ5』より、パパス
死なないでほしかったキャラと聞いて、多くのプレイヤーがまず『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』のパパスを思い浮かべるのではないだろうか。
物語序盤で登場する主人公の父親・パパスは、幼い主人公を連れて旅をしていた。道中で見せる魔物との戦いでの段違いな強さ、戦いの後に主人公を回復してくれる優しさに、頼もしい父の背中を感じたプレイヤーが多くいるだろう。また、サンタローズの村では村人たちから慕われていて、ラインハットでは王から王子ヘンリーの護衛を任されるという人脈と人望を持ち合わせている。
そんなパパスの最期は、誘拐されたヘンリーを救出し、城に戻ろうとしたときだった。現れた大魔王ミルドラースの側近であるゲマが、配下であるジャミとゴンズを召喚。劣勢かと思いきや、ジャミとゴンスの2人を相手に、パパスは圧倒的な強さを見せる。
すると、ゲマは主人公を人質に取るという卑怯な手段に出たのだった。ジャミとゴンズからの攻撃にただジッと耐えることしかできず、パパスは瀕死状態に。そして、ゲマから炎の魔法を放たれたパパスは、「ぬわー--っっ!!」という断末魔をあげ、力尽きてしまうのだった。
パパスがひたすら攻撃を耐えるシーンに、ショックを受けた読者が多いのではないだろうか。憧れの父親像であるパパスは、誰もが生きていてほしかったと願ったキャラクターの1人だろう。
■『ドラクエ7』より、マチルダ
『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』に登場するマチルダは、主人公たちが最初に訪れた石板の世界「ウッドパルナ」の女戦士だ。旅の扉から現れた主人公たちを、ウッドパルナまで送ってくれるという彼女と出会う。短い道中ではあるが、魔物との戦いでは驚異的な強さを見せ、さらに主人公たちを回復してくれるなど、パパスを思い出させるかのような心優しい性格が垣間見える。
しかし、ウッドパルナに到着すると、なぜかマチルダは消えてしまう。そして、村は2度目の魔物の襲撃を受け、女性が人質にさらわれる危機的状況にあった。
実は、彼女の正体は、魔物の1度目の襲撃からウッドパルナを守った英雄パルナの妹であり、ウッドパルナに魔物の2度目の襲撃を仕掛けた主謀者の魔物でもあった。
マチルダが魔物となり果てたのは、パルナがウッドパルナの村人たちから見殺しにされたことが原因だった。村人たちへの不信感が募っていたところを魔物につけ込まれ、気がついたときには魔物に……。
2度目の襲撃からウッドパルナを解放する鍵が、自分の命であることを主人公たちに伝えた彼女は「覚悟のうえ」と言い、強制的に戦闘が始まる。しかし、戦いが始まっても、彼女は一切攻撃をしてこないのだ。ただ防御に徹する彼女を攻撃しなければならず(他の戦闘終了手段もあるが)、胸を痛めたプレイヤーも多いのではないだろうか。そして、戦闘が終わると、選択肢によってはマチルダは自ら命を絶ってしまう。
最初の冒険の地で出会うマチルダの切なすぎる死。重く悲しいエピソードが多い『ドラクエ7』の物語が始まる暗示のような存在のマチルダを、今回は選定した。