■何の因果か…息子と似た傷を負う『僕のヒーローアカデミア』轟炎司
もちろん顔の傷は、ポジティブな意味ばかりを持っているわけではない。堀越耕平氏『僕のヒーローアカデミア』に登場するエンデヴァーこと轟炎司がその一例である。彼は超がつくほどストイックなヒーローで、“No.1ヒーローになる”という理想に縛られ続けていた。
そしてついには自分の子どもにその夢を押しつけ、自分以上の才能に恵まれた末子・焦凍にスパルタ教育を課すようになる。彼の行き過ぎた特訓は家庭を崩壊させ、そのなかで妻の冷は精神を病んでしまう。その結果、焦凍は冷に熱湯を浴びせられ、顔の左側に一生残る傷を負った。
そんなエンデヴァーは、のちに“とある戦い”で顔に大きな傷を負う。傷ができた場所は顔の左側で焦凍と同じ位置だった。自分の分身として扱ってきた息子とよく似た傷を負うとは、なんとも皮肉な展開ではないか。
彼が負った傷は罪に対する罰のようにも、これからの贖罪の始まりのようにも思える。轟家にはまだまだ新たな展開が待っているが、エンデヴァーをはじめとして一家がどのように乗り越えていくのか、そっと見守っていきたい。
今回は漫画で描写される“顔の傷”について考察してきた。ここに挙げたのはほんの一例だが、それでも“顔の傷”には、さまざまな意味が託されていることがうかがえる。成長や決意、生きざま、はたまた罪や罰……それぞれのドラマを知ると、キャラに対する思い入れもいっそう深まりそうだ。