『ゴールデンカムイ』鯉登に『ヒロアカ』轟炎司も 作者の思惑を想像してしまう「作中の展開で“顔に傷を負った”キャラ」3選の画像
『マギ』(少年サンデーコミックス)20巻

 バトル漫画の登場人物に怪我はつきものだが、たいていの場合傷は残らずきれいに治ってしまう。それがフィクションというものだし、そもそもすべての傷を残していてはキリがない。だからこそ、作者がキャラに“あえて傷跡を残す”選択をとる場合、何らかの意図があるのではないだろうか。それが目立つ場所――とくに顔にあればなおさらだろう。

 最近の有名な例を挙げれば、『ONE PIECE』のゾロ。彼の左目には新世界編以降、これまでなかった大きな傷跡が描かれているのだが、そのことについての説明はまだされていない。修行で負った傷なのか、それ以外の事情があるのか……とファンの間ではあれこれ予想されているようだ。

 そこで今回は、物語の途中で傷を負ったキャラをメインに取り上げ、それぞれの傷の意味について考えていきたい。

 

※本記事には、の『ゴールデンカムイ』『マギ』『僕のヒーローアカデミア』の一部内容が含まれます。重要な要素に触れることは避けていますが、気になる方はご注意ください。

 

■顔の傷は決意のあらわれ…!?『ゴールデンカムイ』鯉登少尉

 野田サトル氏『ゴールデンカムイ』には、顔に傷のあるキャラが数多く登場する。主人公の杉元からして顔に目立つ傷があるし、アシㇼパの父親であるウイルクにも十字型の大きな傷がある。また、物語序盤にできた顔の傷が最後まで残った尾形や谷垣、鶴見中尉にいたっては頭蓋骨の前頭部が欠損している……など、「顔に傷」という条件に絞っても、これだけの例があるのだ。

 野田サトル氏『ゴールデンカムイ』は、傷跡のある男たちが数多く登場する。主人公の杉元からして顔に目立つ傷があるし、鶴見中尉は頭蓋骨の前頭部が欠損してしまっている。アシㇼパの父親であるウイルクも、顔に大きな十字型の傷があった。尾形や谷垣など、物語序盤で顔に傷ができ、それが最後まで残った者もいる。“顔に傷”という条件に絞っても、これだけの例があるのだ。

 彼らにとって傷跡は、死線をくぐり抜けてきた証そのものであり、同時に傷ができたことで変化・成長していく転換点としての役割もあるように思える。そういった意味で印象的なのが、鯉登少尉だ。

 鶴見中尉の部下である鯉登は当初、優秀ではあるが経験の浅い未熟者として描かれていた。お坊ちゃん然としており、自分勝手な行動をしては補佐の月島軍曹を困らせることもしばしば。しかし物語が進むたび、作中の誰より急成長していくことになる。

 物語終盤、とある戦いで顔に傷がつくのにも一切かまわず、敵にまっすぐ突っ込んでいった鯉登。作中、手鏡を持ち歩くなど容姿に気を遣っている描写があった彼だからこそ、このシーンには感慨深いものがあった。

 大好きな鶴見中尉に褒められることを第一としていた純粋な青年は、やがて部下のため、皆のために自分が戦うという意志を固めていく。一生残ることになったこのときの顔の傷は、彼の成長や決意のあらわれでもあるのだろう。

■キャラの性格にかかわる…? 顔から脚にかけて大きな傷を負った『マギ』練白瑛

 “顔に傷”というと、大高忍氏『マギ』の練白瑛を思い出す人もいるだろう。

 彼女は大国・煌帝国の女将軍で、“いたいほど迷いがない”と称されるほど、まっすぐで心優しい人物である。争いを好まない性格でもあり、可能な限り話し合いで物事を解決しようとするのだが、そのせいで好戦的な部下をうまくまとめることができずにいた。

 あるとき、白瑛は帝国の勢力を広げるため、遊牧民族・黄牙族に帝国の傘下に入るよう交渉する。あくまで“外交”であり、誰も傷つけないことを前提としていた彼女だが、部下たちは勝手に侵略行為を始めてしまう。

 その後、仲間を傷つけられ怒り狂った黄牙の者たちは何も知らない白瑛を取り囲み、そのうちのひとりが剣で斬りかかる。しかし彼女は武器を手に取らないどころか、微動だにせずに真正面から攻撃を受け、顔から脚にかけて大きな傷を負ってしまうのである。

 以後も残るこの傷について、作者の大高氏は『サンデーまんが家バックステージ』で、“キャラの性格にかかわる部分なので描写している”と言及していた。

 顔に傷を負わされようと表情ひとつ変えないところからも、彼女の強く揺るぎない精神が伝わってくるように思えたこのシーン。いずれにせよ、白瑛というキャラを語るうえで欠かすことのできない、重要なエピソードとなったことは間違いないだろう。

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