燃えさかる炎の球! 血を抜いて減量! 「スポーツの日」にふり返りたい “命ギリギリ”描く「昭和のスポ根漫画の猛烈エピソード」3選の画像
講談社コミックス『完全復刻版 あしたのジョー』第1巻(講談社)

 10月10日は「スポーツの日」。1964年に「東京オリンピック」の開会式が行われたことを記念して1966年に「体育の日」と定められ、2020年(令和2年)に「スポーツの日」へと改められた。

 昭和から令和を通じて名称などが変わった「スポーツの日」であるが、スポーツ漫画にもさまざまな変化が訪れている。たとえば、昭和のスポ根漫画と言えば鉄拳ありしの「熱血指導」と「根性論」が全盛で、過剰なトレーニングや休憩なしといった、今となっては仰天の特訓メニューを選手に強いていた。一方、人気バレーボール漫画『ハイキュー!!』では、無茶な練習をしようとする主人公らを諫めてくれる先輩や指導者の存在もあったり、正確な情報と描写から「リアルなスポ根漫画」として多くのファンから支持を集めたのだ。

 とはいえ、命がけで必殺技を手に入れ、死に物狂いで戦い続けた昭和のスポ根漫画に、当時の読者が手に汗握りながら熱中したのも確かだろう。そこで今回は、昭和のスポ根漫画で「命ギリギリ」と感じた猛特訓エピソードを3選紹介したいと思う。

■『巨人の星』一歩間違えれば大事故? 花形に対抗するため父・一徹が考案した鬼特訓

 最初に紹介する作品は、昭和のスポ根漫画の金字塔『巨人の星』。元巨人軍選手の星一徹を父に持つ星飛雄馬が、幼少期より徹底した野球の英才教育を受け読売ジャイアンツ(巨人軍)で活躍する物語である。

 テレビアニメ化もされた同作だが、主題歌にある「試練の道」「血の汗」からもうかがえるように飛雄馬の人生は壮絶だ。星一家は狭い長屋に父子三人で住んでおり、日々の糧を一徹の日雇い賃金でまかなっていた。困窮した生活にも関わらず、当時高級品だった野球道具を与えてくれた父親に飛雄馬も「幼い頃から遊び道具はボールだけ」だと愚痴をこぼすほどである。

 そんな一徹が飛雄馬に課す特訓は常軌を逸していた。たとえば、夜遅くまで続くノックなどはまだ序の口で、成長期の子どもに強烈なバネを使った「大リーグボール養成ギブス」を装着させ、野球に有利だからと右利きを左利きに矯正するほどの徹底ぶりである。

 なかでも特筆すべきが、リトルリーグ時代にライバル・花形満の殺人ライナー「ノックアウト打法」に対抗するため一徹が考案した特訓だ。メラメラと炎が燃えさかるボールを飛雄馬に打ち込み、それを“手を使わず”弾き返せと言うのである。受ける側の飛雄馬はパンツ一枚に下駄ばき姿で一歩間違えれば大ヤケド。そのうえ近隣家屋に燃え移りでもしたら大惨事にもなりかねない特訓なのだ。

 そのかいあってか、飛雄馬はとある方法で花形にうち勝ちはしたものの、危険すぎた特訓であるのは間違いないであろう。

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