『スタジオジブリ』の作品と言えば、『となりのトトロ』や『崖の上のポニョ』など、世代を問わず楽しめる作品ばかり。しかし一方で、『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』、『火垂るの墓』などには、幼い子どもにとって少しショッキングな描写もある。そこで今回は、ジブリ作品のなかから子どもの頃に見て怖かったトラウマシーンを紹介していこう。
■「腐ってやがる…」『風の谷のナウシカ』で巨神兵がドロドロに溶けていくシーン
ジブリ作品のなかでもトラウマシーンが多いのが、1984年に公開された『風の谷のナウシカ』ではないだろうか。『風の谷のナウシカ』は1982年、宮崎駿氏が『アニメージュ』(徳間書店)で連載をしていた漫画が原作で、累計発行部数は1700万部を超えるロングセラーとなっている。
風の谷に住む族長の娘・ナウシカが、荒廃してしまった世界で懸命に生きる姿が描かれた本作。登場する「腐海」と呼ばれる“瘴気(毒ガスのようなもの)を出している菌類の森”には、「蟲」と呼ばれる大きな昆虫のような生物が住んでいた。そんな腐海の姿や蟲たちのビジュアルを見て、幼心に恐れを覚えた人も多いだろう。
なかでもとくに怖かったのが「巨神兵」の登場シーンだ。巨神兵とは、はるか昔「火の七日間」と呼ばれる最終戦争で世界を焼き尽くし、滅ぼしたとされる生命体。
ただでさえグロテスクな見た目の巨神兵がさらに恐ろしい姿になったのは、トルメキアの皇女・クシャナが不完全な状態で巨神兵を呼び覚ましたシーン。完全に体が形成されてない状態で覚醒させられたため、2度のビームを放った直後、巨神兵は瞬く間に腐り落ちていく。ドロドロと崩れ落ちていく巨神兵の姿、クシャナの部下のクワトロが「腐ってやがる…」と漏らしたセリフも相まって、子どもながらにトラウマとなったという声も多い。
しかし一方で、この巨神兵が朽ちていくシーンは『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズの監督としても有名な庵野秀明氏が作画を担当しており、当時から庵野氏のずば抜けたセンスが光る名シーンとも言えるだろう。
■サンの悲痛な叫びも届かない…!『もののけ姫』で偉大な猪神の王・乙事主がタタリ神になるシーン
『風の谷のナウシカ』と並んでトラウマシーンが多いジブリ作品が、1997年に公開された『もののけ姫』だ。
村を救うために“タタリ神”の呪いを腕にうけた少年・アシタカの、呪いを解くための旅が描かれた本作。作中、巨大な山犬や猪など、“神”と呼ばれる存在たちが登場する。本来、人間は神とうまく共存していたが、“タタラ場”と呼ばれる集落の責任者・エボシ御前が森を削り石火矢(銃のようなもの)の生産を始めたことで、その均衡は崩れていく。
アシタカがタタラ場に辿り着いたとき、エボシが鉛を撃ち込んだ猪神がタタリ神になっていたことが判明する。タタリ神は黒くておぞましい数の触手に体を覆われ、大きな蜘蛛のような姿で機敏に動く。縦横無尽に動き回るこのタタリ神が出てくるシーンは、かなり衝撃的だ。
なかでもトラウマになりかねないシーンが、猪神の王・乙事主がタタリ神になる場面だ。神のなかでも“話がわかる”数少ない存在だった乙事主だが、人間へ強い恨みを抱いており、さらに石火矢による深い傷を負ったことで、徐々に錯乱状態になっていく。
齢500歳で目の見えない乙事主のサポートについたのが、犬神・モロの娘で人間でもあるサン。乙事主がタタリ神になりかけていると気づいたサンは懸命に声をかけるも、彼女の声は届かない。
黒い触手が少しずつ乙事主の体から生えはじめ、ニョロニョロと不気味に動きながらサンを道連れに取り込んでいく。そのおどろおどろしい描写は子どもながらに鮮烈で、今でも忘れられないシーンのひとつだ。