『機動戦士ガンダム』シリーズに登場する「ジオン公国のパイロット」といえば、誰を思い浮かべるだろうか。やはり、主人公のアムロ・レイのライバルであるシャア・アズナブルだろうか。それともランバ・ラルや黒い三連星といった、他のエースパイロットだろうか。今回は名だたるエースパイロットの影に隠れて、ひっそりと活躍した「強パイロット」を振り返りたい。
■ギレンも期待した「木星帰り」のシャリア・ブル
シャリア・ブル大尉はテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の第39話「ニュータイプ、シャリア・ブル」に登場したジオンパイロット。木星帰りのニュータイプとして実力を認められ、キシリア隊が開発を進めるニュータイプ専用MAに搭乗することになった男だ。
自分の名前がサブタイトルにまでなっているものの、劇場版では登場シーンがカット。外伝やゲームなどの他媒体でも目立つ機会はほとんど無く、一般兵に毛が生えた程度のあつかい。そのため「シャリア・ブル」自体を思い出せないという人もいるのではないだろうか。
そもそものテレビ版での扱いも地味な彼ではあるが、実は常人離れした描写が多い、かなりの実力派パイロットではある。
たとえば、初めて搭乗したモビルアーマー「ブラウ・ブロ」で、いきなりの実戦でオールレンジ攻撃を行い、カイのガンキャノンとハヤトのガンタンク、セイラのGファイターを手玉に取るシーンがある。ガンキャノンに至っては、両足を破壊。39話時点でのホワイトベース隊は、既にかなりの激戦を潜り抜けてきており、カイやハヤトといえど、かなりのベテランで歴戦の猛者だ。それを相手にしてなお余裕があることから相当なパイロットだと分かる。
シャリア・ブルはこの後、アムロによって比較的あっさり撃墜される。だが、実際のところは、アムロはしっかりと苦戦していて「この敵は違うんだ!」とシャリア・ブルのことを、かなり警戒していた。また、ガンダムが初めてオーバーヒートを起こすほど酷使された戦いでもあった。
真面目で誠実な語り口で、死ぬ間際にはMAに同乗した女性技師に「逃げろ!」と指示するなど、頼り甲斐のある上官としての姿も見せたシャリア・ブル。実戦ではアムロに歯が立たなかったが、1話のみの地味な退場が惜しいパイロットだった。