■最強の魔人と結ばれた絆

 続いてミスター・サタンが成した偉業とは、魔人ブウを手なずけてしまったことにある。目の上のたんこぶだったバビディを殺し、解き放たれた魔人ブウ。圧倒的な力を持ちながら、善悪の区別がつかないむじゃきな子どものような存在だった。

 そんなブウを殺そうと接近したのがサタンだ。いろいろ小細工してブウを倒そうとするがすべて失敗に終わり、なぜかサタンはブウに気に入られてしまう。さらにブウが拾ってきた子犬を通じて、サタンとブウは固い絆で結ばれていくことになる。

 最初はブウを殺す気満々だったサタンも、あまりに悪意のないブウに情も湧く。そしてサタンの大きな功績として注目すべきは、善悪が分からないブウの倫理観を変えたことだ。人を殺したり、建物を壊すのは良くないとサタンが諭すと、ブウは「じゃあやめた」と大人しく従った。

 その後、ならず者がブウと仲良しの子犬を撃ったことで、結果的にブウは二人の魔人に分裂することになってしまったが、この一件さえなければサタンのおかげで地球に平和が訪れていたかもしれない。

■悟空の元気玉をフルサポート!?

 そして最後のサタンが成し遂げた偉業は、魔人ブウから生まれた邪悪な魔人ブウを倒すため、彼にしか出来ないサポートを行ったことだ。

 ブウを倒すための元気玉を準備するとき、悟空は地球に生きるすべての人間に気の供給をお願いする。しかし、よく知らない声で気を分けるように呼びかけても、ほとんどの人間は協力しようとしなかった。

 そんなときに業を煮やしたミスター・サタンが「オレが魔人ブウを倒してやるから、おまえたちもさっさと力を貸さんかっ」と協力を呼びかける。この声を聞いた世界中の人々は、ブウと戦っているのはサタンだと勘違い。サタンの言うことならと全世界の人間は素直に協力する。このアシストによって悟空は元気玉を完成させ、いよいよ放つ場面が訪れた。

 しかし、ブウのすぐそばには動けなくなったベジータがおり、元気玉の巻き添えになるため、悟空は攻撃を躊躇してしまう。そんなとき岩陰に隠れていたサタンが隙を見て、ベジータを担ぎ上げて安全な場所に退避した。

 このサタンの機転の効いた行動を見た悟空は「やるじゃねえかサタン!!!」「おめえはホントに世界の…救世主かもな」と褒め称え、トドメの元気玉を放ったのである。悟空が言った通り、これら一連のミスター・サタンのサポートがなければ、ブウに勝利することは難しかったかもしれない。


 ミスター・サタンは取るに足らないお調子者キャラで、悟空たちの手柄を横取りした嫌なヤツと思っていた人は多いことだろう。しかし、小心者で見栄っ張りな面はありながらも悪い人物ではなく、むしろ根は善人と言っていい。とくにブウと一緒に仲良くなった子犬が銃撃されたとき、サタンが怒りをあらわにして武装した悪人に攻撃を敢行した姿には感動させられた。

 悟空たちのような超人的な強さはないかもしれないが、周囲を巻きこみながら結果的に幸せをもたらすサタンのような存在にも憧れてしまう。

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