■湘北の大黒柱「赤木剛憲」でさえ乱れた集中力

 フリースローの緊張は、ときにベテランの3年生プレイヤーにも襲いかかる。

 湘北の大黒柱で“ゴリ”の異名を持つキャプテン赤木は、197cm・93kgという高校生とは思えぬほどの巨体で見た目も強面。プレイ中には名物(!?)の「ゴリラダンク」をぶちかましたり、相手のシュートを激しく叩き落とす「ハエタタキ」をするなど、一見、豪快でプレッシャーとは無縁のように感じられる。

 しかし、赤木は実は繊細な心を持ち、人一倍プレッシャーを感じやすい人物でもある。それが如実に出たのが、インターハイ神奈川県決勝リーグ最終戦の湘北対陵南の試合前半、陵南キャプテン魚住純の激しいディフェンスで床に叩きつけられてしまったシーン。このプレイで海南戦で痛めた足首のことが気になり始めてしまった赤木は、大事なフリースローを2本とも外してしまう。

 ちなみに赤木は「オレも昔は苦手だった!!」と公言するほど、フリースローが得意ではなかった。しかし、上記のシーンでは同学年の木暮公延が「確実にとっとこう!!」と、三井寿が「オッケー 1本入れとこうぜ」と、“入れて当然”かのように赤木に声をかけている。

 3年間の弛まぬ努力で、仲間たちの厚い信頼を得るほどにフリースローを克服してきた赤木。しかしそれでも外してしまうほどのプレッシャーが、フリースロータイムにはあるということだ。観客の罵声も気にしない三井のような例外もいるが、バスケット選手にとってフリースローは魔の時間帯と呼べるものかもしれない。

 

『SLAM DUNK』では、たびたびフリースローシーンが描かれる。大事な局面で2点を手に入れられるチャンスの反面、外したら速攻など、相手へのシュートチャンスが生まれてしまうリスクもあるフリースロー。そのプレッシャーを井上雄彦氏は実に巧みに描いていると思う。

 12月には映画化もされる『SLAM DUNK』。映画館でもフリースローのプレッシャーと戦う選手たちの姿が見られることだろう。楽しみだ。

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