■フル3Dでキャラが踊る革命『フレッシュプリキュア!』

 そして、2009年に始まった『フレッシュプリキュア!』の「H@ppy Together!!!」(ED)で新たな革命が起こる。

 それまでの『プリキュア』シリーズのエンディングにもダンスシーンは取り入れられていたが、『フレッシュプリキュア!』はフル3Dでカメラワークもあるというケタ違いのことをやってのけた。それまで3Dは立体物を表現するという特性上、主にメカやオプジェといったもので活用されることが多く、キャラクターは手描きというのが国内アニメの主流な手法だった。

 理由は明確で、髪や顔のパーツが極端なアニメキャラを3Dにしてもバランスが悪く、表情も乏しいため可愛くならないということ。3Dの滑らかさは緩急のあるセルアニメ(リミテッドアニメ)に慣れた視聴者には違和感が大きかったことにある。しかし、同作エンディングの3Dキャラはそんな既成概念を覆し、しっかりかわいい、キビギビ動くという3Dであったのだ。

■アニメ業界が注目する『プリキュア』シリーズのエンディング

 アニメキャラの3D化が敬遠されていたのは、3Dの持ち味である正確性が原因でもあった。漫画を思い浮かべてもらえばイメージしやすいところだが、前述した顔の造形や髪型には角度によるウソが必要だ。正面からはかわいい(かっこいい)姿でも、それを3D化して横から見るとありえない造形になる場合が多々ある。下手にカメラワークを駆使すると、その欠点がモロに画面に出てしまう。これを解決するために『フレッシュプリキャア!』ではカメラワークに合わせて3Dモデルを変形させており、さらにセルアニメ風に見せるセルルック(トゥーンレンダリングをさらにセルアニメ風に見せる技術)という技法を取り入れることで、いかにもCGという質感の解消も行われている。

 3Dモデルの変形技法、セルルックの3Dアニメはこれ以前にもあるのだが、本作はそれらシーン(定点カメラ)の中で動く3Dキャラ、メカとは異なり、ダンスという激しく動く3Dキャラをさらにカメラワークで色々な角度から見せながら映していくというのが画期的だった。同シリーズのエンディングはこれ以降3Dで制作されるようになり、女児向けアニメながら毎作アニメ関係者の耳目を集める場所となっているのだ。

 このような先駆者を経て、近年ではクオリティはもちろん、各作品様々にオリジナリティを打ち出したダンスムービーが表れている。『呪術廻戦』(2020)では虎杖悠二や五条悟がラフに踊るエンディングが話題になり、『名探偵コナン』では2000年のオープニングで無表情にパラパラを披露するコナンが強烈にシュールだと人気を集めたが、それから20年後、2020年のオープニングではWANDSの「真っ赤なLip」に乗ってキレキレに踊るコナンが脚光を浴びた。オープニング、エンディングは本編ではできないチャレンジの場とも言えるので、今後『ハルヒ』や『プリキュア』を超える衝撃作が出てくることを期待したい。

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