鎌倉幕府を創設した源頼朝。それから400年後の戦国時代に活躍した織田信長。両者ともに「非情」で知られる武将であるが、もしもこの二人が戦ったのなら勝つのはどちらであろう? 剣豪として名高い宮本武蔵と新選組の沖田総士、発明家としても知られるレオナルド・ダ・ヴィンチと米国の発明王トーマス・アルバ・エジソンが戦ったら……。
こうした対決は「偉人バトル」とも呼ばれ、近年はアプリゲーム『Fate/Grand Order』の人気で周知されるようになったものの、調べてみるとその歴史は意外に古い。たとえば1964年に故・山田風太郎が発表した伝奇小説『魔界転生』は、天草四郎など名立たる偉人が蘇り徳川転覆を目論み、それを阻止せんとする柳生十兵衛たち剣豪と熾烈な戦いをする物語。原作からの改変はあるものの映画やゲームや舞台化は数多く、故・石川賢によるコミカライズも人気だ。
漫画だからこそ描くことができる血湧き肉踊る「もしも」の世界。そこで今回は、歴史や逸話などに登場した人物たちによる「偉人バトル漫画」をいくつか紹介したいと思う。
※以下には、コミックやアニメ『ドリフターズ』『終末のワルキューレ』『文豪ストレイドッグス』の一部内容が含まれています。ストーリーを解説するのが本記事の主目的ではありませんが、気になる方はご注意ください。
■古今東西の偉人たちがそれぞれの因縁を抱えて「異世界」で激突!『ドリフターズ』
最初に紹介するのは、『月刊ヤングキングアワーズ』で連載中の平野耕太氏による『ドリフターズ』。古今東西の偉人や有名人が異世界に召還され火花を散らすバトルアクションであると同時に、薩摩の戦国武将「島津豊久」を一躍有名にしたと言っても過言ではない作品だ。
関ケ原の戦で瀕死の状態となった島津豊久は、謎の男「紫」によりエルフやオークが存在する異世界へと召還される。意識を失ったまま古城へと運び込まれる豊久だったが、そこで自分と同じ「漂流者(ドリフターズ)」と呼ばれる「織田信長」や「那須与一」と出会う。この世界は人間が築いたオルテ王国に支配されており、豊久たちは成り行きで虐げられてきたエルフやドワーフなどの亜人たちを救い「国盗り」を開始することになる。
一方、紫と敵対関係の少女「EASY」が召還した「廃棄物(エンズ)」は異能を持つ偉人ぞろいで、黒王を中心に人類を滅亡させようとドリフターズに襲いかかるのだが……。
本作の魅力と言えばやはり、主人公・島津豊久をはじめとする魅力あるキャラクターだろう。決して有名な人物ではない豊久であるが、読み進めていくうちいつしか彼の生きざまに惹かれていく。豊久以外にも、大東亜戦争の撃墜王である菅野直や大日本帝国海軍提督の山口多聞など、「知る人ぞ知る」人物が物語の要として登場している。
また、エンズと違いドリフターズは特殊能力を持たず、信長が「漂流者とはつまり 技術の渡来であると同時に 思考の差異者だ」と語るように、常識や固定概念を覆す戦い方で対抗しているのも作品のおもしろさの一因でもあるだろう。