■制作現場のドタバタを描いた『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』
次に紹介するのは2021年から「WEBコミック ゼノン編集部」で連載スタートした、倉尾宏氏による『北斗の拳 世紀末ドラマ撮影伝』。
こちらはキャラクターにスポットを当てたスピンオフではなく、「もしも『北斗の拳』が実写ドラマだったら?」をコンセプトにした作品。そもそも漫画やアニメの『北斗の拳』が存在しない世界を舞台に、俳優やスタッフらが特撮アクションドラマ『北斗の拳』をゼロから作り上げるという物語だ。
金曜ドラマ『北斗の拳』は、1980年代の『東武警察』や『必勝仕事人』などを越える大ヒット作を目指していた。そのためインパクトのある演出を盛り込むため、特撮班渾身の模型での失敗を利用して内臓破裂を撮ったり、何台ものウインチで強引に引っ張って革ジャンを破いたりと、手探り状態で撮影を進めていく。
また登場人物があくまで役を演じる俳優という設定がおもしろい。ケンシロウ役の俳優は筋肉スーツを着て太眉シールを貼り、世紀末の悪党役にはプロレスラーを起用するなど、ここでも試行錯誤の毎日。
撮影現場ではさまざまな事件やアクシデントが発生するも、それらを逆手にとってドラマ『北斗の拳』を作り上げていく。実際に漫画をゼロから作った武論尊氏と原哲夫氏のアイデアがいかにすごかったか、自由すぎるスピンオフで再び驚かされてしまうに違いない。