家族にはいろいろなカタチがあり、マンガやアニメなどの創作物の中でも、さまざまな家族の姿が描かれている。血のつながりがなくても、ひとつの家族のように過ごすケースを便宜上“疑似家族”と呼んだりもするが、この場合も本人たちが家族とみなせば、まごうことなき“本物の家族”なのである。
そこで今回は少年マンガに登場した、魅力的な“疑似家族”の関係性について紹介していこう。
■偽物から始まった本物の家族愛 『SPY×FAMILY』フォージャー家
やはり最初に紹介しておきたいのが、“疑似家族もの”の代表格ともいえる『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』のフォージャー家だ。
遠藤達哉氏の描く同作は、スゴ腕のスパイ“黄昏”が任務のために家族を作ることを命じられ、精神科医ロイド・フォージャーとして偽りの人生を始めるところから動き出す。彼は孤児院でアーニャという少女を引き取り、偶然出会った女性ヨルと利害の一致から偽装結婚をすることに。
実はスパイであるロイドを筆頭に、娘は超能力者、妻は殺し屋というトンデモ家庭なのだが、人の心を読めるアーニャ以外はそのことに気づいていなくて――というのが『スパイファミリー』の大筋だ。
ロイドは世界平和のために何もかもを捨ててきたスパイ。そんな彼は自分が作り上げた家庭にも特別な思い入れは持たず、ただ任務のため良好な関係維持に務めるだけ……のはずだった。
しかし、アーニャを中心としたドタバタな日常を繰り広げるうちに、3人は次第に本物の家族のような絆を育んでいく。冷静沈着を常とするロイドが、妻と娘にだけは振り回されっぱなしなところもほのぼのさせられる部分だ。
平和な日常回が続くと忘れがちだが、この一家は場合によっては一瞬で崩壊するという危うさも持ち合わせている。ホームコメディの裏でメインストーリーがじわじわ進んでいる気配もあり、一体この先どうなるのかとハラハラドキドキさせられてしまう。