■けんか手ぶくろ

「ねがい星」と同様に、ドラえもんが「使い物にならない」と捨てようとしていたひみつ道具の1つが「けんか手ぶくろ」だ。

 これはボクシンググローブのような手袋で、着用すると勝手に自分の顔を殴り、1人でケンカができるという効果がある。この手ぶくろをつけてしまったのび太は、自らの手で自分の顔面をボコボコ殴り始め、傷だらけになっていた。

 この手袋を用いて1人でケンカをしたくなるシチュエーションをいろいろ考えてみたが、格闘家がトレーニングのために使うくらいしか思いつかなかった。

■うそつきかがみ

「うそつきかがみ」は、その名のとおり“ウソをついて人をだます鏡”だ。鏡の前に立った人の姿を勝手に美形に変えて映し出し、言葉巧みにおだてながらさらに美しくなる方法をアドバイスする。

 これだけならいいのだが「うそつきかがみ」が教えるのは、単にブサイクな変顔になるだけのウソの助言。ようするに、はた迷惑なジョークグッズのようなひみつ道具なのだ。

 しかも、おだてられた人は「うそつきかがみ」の言うことをなぜか鵜呑みにし、鏡の前から離れられなくなるという、ちょっと不気味な効果もある。今あらためて考えてみても、まともな用途が思い浮かばないひみつ道具である。

■百苦タイマー

 100分の間に、100の苦しみに遭うという道具「百苦タイマー」。ドラえもんは心を鍛える修行のために使うひみつ道具だと説明していた。

 この百苦タイマーをうっかり作動させてしまったのび太は、1回目の苦しみとしてドラえもんとセワシにぶん殴られる。しかも回数を重ねるごとに遭遇する苦しみは増していき、弱い人は10回目ぐらいで死んでしまうという、とんでもない事実が判明する。

 そして百苦タイマーは一度作動すると停止させる手段はなく、爆弾でも破壊不可能。地球の果てや宇宙に逃げても、訪れる苦しみからは逃れられないというのが恐ろしい。いくら修行のための道具とはいえ、100の苦しみに耐えきれずに死んでしまったら意味がない。もはや何のために存在するのか理解不能なひみつ道具である。


 作中に時々登場する、正しい用途が分からない残念なひみつ道具。このほかにも、絶対使いたくないような道具はまだまだたくさん存在する。そんな不条理なところも『ドラえもん』のコミックにハマってしまう面白い部分と言えるのかもしれない。

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