荒川弘、ハロルド作石、和久井健も…あの漫画が同じ作者! 作風の多彩さで読者を驚かせた“神業”を持つ漫画家といえば?の画像
左から)画像は和久井健氏による『新宿スワン』第1巻と『東京リベンジャーズ』第1巻(ともに講談社)

 複数のヒットを多く飛ばす漫画家は少なくないものの、たいていの漫画家にはそれぞれ「得意ジャンル」があるものだ。女の子をかわいらしく描くことでヒットを連発するラブコメ作家や、歴史物を専門とする作家などは少なくない。

 しかし中には「本当に同じ作者?」と疑ってしまうような、全く世界観の異なる作品を生み出す神業を持つ作家がいる。中には絵のタッチまで変わってしまう人もいるのだから、ふと作者名を見て驚いた経験がある人もいるのではないだろうか。

 まずは、1983年から漫画家として活動を続ける浦沢直樹氏。代表作をあげようとしてもキリがないほど名作を生み出し続けるヒットメイカーだ。

 浦沢氏の作品は、マイナーだった女子柔道の世界を描き、当時活躍していた谷亮子選手の「ヤワラちゃん」という愛称の元ネタにもなった『YAWARA!』やテニス漫画『Happy!』といったスポーツ漫画、 勝鹿北星氏・長崎尚志氏との共作で考古学やミステリーや1980年代当時の社会情勢を盛り込んだヒューマンドラマ『MASTERキートン』、サスペンススリラー漫画『MONSTER』、数度にわたって実写映画化もされたSF漫画『20世紀少年』、手塚治虫の『鉄腕アトム』をリメイクした『PLUTO』など、どれもジャンルが異なるものばかり。それでいてどの作品も先の読めない展開で、各作品に登場するあらゆるジャンルの知識量には驚かされるばかり。

 浦沢氏は現在『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて『連続漫画小説 あさドラ!』を連載中。これは戦後から現代にかけてたくましく生きた女性の一代記で、またしても新たな作風でファンを魅了している。

 違ったジャンルの作品を描き読者を驚かせた漫画家といえば、『鋼の錬金術師』で、錬金術の存在する世界で生きる兄弟がさまざまな人と関わりながら旅を続ける壮大なダークファンタジーを描いてヒットを生んだ荒川弘氏もそうだろう。

 荒川氏の次作は、自身の出身である北海道の農業高校での経験が多く反映されている『銀の匙 Silver Spoon』だ。『ハガレン』が架空の19世紀ヨーロッパを舞台にしているのに対し、『銀の匙』は実際に農業高校で起こり得る、どこまでもリアルを追求した作品。

 一見全く異なる2作だが、そのどちらにも共通するのは「命の重さ」を感じる作品であるという点だろうか。また骨太な作風が人気の荒川氏だが、作者本人が女性と知って驚くファンも多い。

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