「『機動戦士ガンダム』を作ったときと同じことをやっている」富野由悠季監督が語る『Gのレコンギスタ』最終章への想いの画像
富野由悠季氏(撮影/髙橋しのの)

 2019年に第1部が公開され、その後第2部、第3部が制作されてきた劇場版『Gのレコンギスタ』シリーズ(以下、『G-レコ』)。その最終作にあたる『Gのレコンギスタ V』「死線を越えて」が公開中。

 物語の舞台ははるか未来。前世紀の遺物である軌道エレベータ「キャピタル・タワー」をめぐり、失われた技術を手に入れた大国が世界戦争に臨もうとしていた。それに気づいた少年少女たちが謎のメカ「G-セルフ」で戦場と化した宇宙を冒険していく。

 TVアニメの黎明期から、作り手として第一線で闘い続けてきたのは、御年80歳の富野由悠季総監督。彼はなぜ、本作を生み出そうと考えたのか。そして映画の制作を終えたいま、次に彼が目指すものを前後編でお届けする。

■稀代の歌い手かつ作詞家の歌詞に背中を押された

 まず『G-レコ』の特筆すべき点は、全5部作という大長編であることだ。TVシリーズを経て、こういった形で映画化された背景には、どのような制作の経緯があったのか。

 

「『G-レコ』という作品はTVシリーズがあり(2014年より放送)、そこで最後までつくってみて作品のコンセプトは満足いくものになったものの、欠点がたくさんあることがわかった。映画にして作画や演出的なミスを直したいと思ったんです。TVシリーズの作品を映画化するときの構成は、これまでも『機動戦士ガンダム』(1979年)などを三部作で映画化しているから、すぐにわかった。と同時に、今回は3本の映画ではまとめきれないこともすぐに見えた。それでほぼ自動的に5本立てになったんです。
 昨今のアニメの状況では、時間をかけて連作で映画化する作品も珍しくありません。だから、5本をつくることが長いとは思いませんでした。ただ、2本目までを作ったときに不安なことがあったんです。それは作品として第5部まで作るにはスタッフが息切れするんじゃないかということ。そこでドリカム(DREAMS COME TRUE)さんに声をかけました」

 

 DREAMS COME TRUEは第2部『Gのレコンギスタ II』「ベルリ 撃進」、第3部『Gのレコンギスタ III』「宇宙からの遺産」に「G」というテーマソングを書き下ろしている。

 

「第2部のときに声をかけたら、ドリカムが参加してくれたんです。そのおかげで第4部、第5部をつくっていくための息が付けたんです。ドリカムの曲が作品に色味を付けてくれました。
 こういう言い方は社交辞令的に聞こえるかもしれないことは承知しているけれど、吉田美和さんという稀代の歌い手であり、作詞家がこの『G-レコ』を見てくれて、その歌詞が背中を押してくれたということはあります」

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