■社会システムへの警鐘を打ち鳴らし続けた不朽の名作『地球へ…』
最後に紹介するのは、現在は廃刊となった『月刊マンガ少年』に1977年から1980年にかけて連載された竹宮惠子氏のSF漫画『地球へ…』。竹宮氏は『風と木の詩』などでも知られる女流漫画家だが、『アンドロメダ・ストーリーズ』や『私を月まで連れてって!』など多くの名作SF作品を執筆している。
同作の舞台は、人々がコンピューターに完全管理された現在よりも遥か未来の世界。惑星アタラクシアで育った少年ジョミー・マーキス・シンが、社会から迫害されていた「新人類(ミュウ)」を引き連れ地球を目指す物語だ。
作中での子どもたちは14歳の誕生日である「目覚めの日」に成人検査と称して洗脳され、この時に超能力を持つミュウを発見し排除していた。彼らの多くは虚弱や障害の補完として超能力を持つのだが、ジョミーは健常者でありながら強いミュウとして長であるソルジャー・ブルーに見出された。キース・アニアンやフィシスなど、魅力的なキャラが多数登場し物語を彩った。
環境破壊やコンピューターに依存した管理社会など、40年以上前の作品であるにも関わらず現代社会へと警鐘を鳴らし続ける不朽の名作だ。ちなみに、1980年のアニメ映画でメインビジュアルとして描かれたヘッドフォンの青年だが、彼は主役のジョミーではなくソルジャー・ブルーである。
このほかにも少女漫画では佐々木淳子氏による『那由他』、柴田昌弘氏の『紅い牙シリーズ』、和田慎二氏が手掛けた『超少女明日香』など、1970年~1980年代にかけて超能力者を扱った作品はハードな内容が多かった。
強い力を持つことの意味を、これらの作品を読み返すことで考えてみてはどうだろうか。