■心の壁どころか物理的にぶち壊す「鬼塚英吉」

 藤沢とおる氏の『GTO(グレート・ティーチャー・オニヅカ)』は、かつて伝説の不良だった鬼塚英吉が教師として活躍するハチャメチャな学園物語。反町隆史主演で実写ドラマ化もされている。

 そんな鬼塚は教育実習先で知り合った、とある裕福な家庭の女子生徒と親しくなる。その子の家はもともと貧しい家庭だったが、両親が仕事で成功をおさめてお金持ちになると夫婦仲が悪くなり、家庭は冷え切っていた。

 そんな家に帰るくらいなら死んだほうがマシという少女は、しばらく鬼塚の家に居候するが、狭いアパートで家族仲良く暮らしていた頃に戻りたいと本音を明かし、涙を流す。それを聞いた鬼塚は、巨大なハンマーを持参して彼女の豪邸を家庭訪問。彼女の父親の部屋に入っていくと、娘との部屋を隔てている壁を物理的にハンマーでぶち壊した。

 そして「こっから先はおまえしだいだぜ?」と伝えて鬼塚は去ったが、その一件をきっかけに彼女の家族は再びコミュニケーションが増えたという。

 生徒に対する指導というより、父兄に対する教育的指導ではあるが、このハチャメチャな力技で問題を解決できたのは、かつて暴走族のリーダーとして湘南で暴れまわった教師・鬼塚英吉ならではだろう。

■極道育ちならでは!? セオリー無視のとんでもない教え

 森本梢子氏の漫画『ごくせん』は、任侠集団・黒田一家の孫娘である“ヤンクミ”こと山口久美子が熱血高校教師として活躍する物語だ。実写ドラマでは仲間由紀恵がヤンクミ役を好演して話題になった。

 同作のヤンクミも、とんでもない指導法を披露した教師だ。生徒数の減少によって理事長が閉校を言い出したとき、ヤンクミは高校を守るために「何かで日本一になる」ことを宣言する。

 得意なのはケンカくらいしかないヤンクミは、日本一の高校ボクシングの名門校と練習試合を行い、勝つことで日本一を証明することに。しかし相手は高校チャンピオンを多数擁する名門であり、そんな簡単に勝てる相手ではなかった。

 教え子の母校を守るため、何が何でも勝ちにこだわるヤンクミは、「これは勝たなきゃならねぇケンカなんだよ」「ケンカにゃルールなんてねェ フェアプレイなんぞクソくらえってんだ」と生徒に助言。さらに「どんなことやってもいいから、このケンカ勝って来い」と、スポーツマンシップの欠片もないアドバイスを送った。

 このヤンクミの教えを守り、選手は審判が見てない隙を狙ってヒザ蹴りやヒジ打ちを巧妙に繰り出し、見事勝利。挙げ句の果てには、ヤンクミ自らが相手高校の監督と試合を行い、KO勝利して名門ボクシング部を相手に勝ち越すことに成功する。

 ふつうの教師なら絶対アウトな指示だが、目的遂行のために教師のセオリーを完全に無視したヤンクミ。「勝てば良い」という方向に振り切ったときの思いきりの良さは、さすが極道育ちと言える。


 さまざまな職業でコンプライアンス意識が取りざたされる昨今、マンガやアニメのようなフィクションの世界くらい、現実ではありえないハチャメチャな活躍を楽しみたいものだ。

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