■バブル期独特の空気が漂っていた『美味しんぼ』

 最後は1988年から1992年のバブル期真っ只中に放送されたアニメ『美味しんぼ』から。OP「Dang Dang気になる」からトレンディドラマ感にあふれていた同アニメだが、本編も随所に好景気を感じる内容。お金にものを言わせる横柄な人物が多く登場し、バブルならではの豪華な料理や贅沢なお金の使い方など、描かれる社会が全体的にきらびやかでギラギラしている。

 主人公の山岡士郎は典型的なサボリーマンで、日常的に遅刻をしたり仕事中に競馬に行くなど仕事に関する描写がかなりのんびり。バブル景気のためか仕事に関しては能天気で危機感のない様子が感じられる。

 さらには、士郎は会社の経費を使って純金のスプーンでキャビアを食べたり、米粒と米粒の間に含まれる空気量を見比べるために寿司をスキャンしたりと、やることなすことが現代の感覚とはかなり異なっている。一方で飽食ブームや好景気に沸く大衆を批判するようなシーンもあった山岡士郎だが、当時の『美味しんぼ』からは、やはりバブル期独特の空気感が漂っていた。

 いつか今我々が見ているアニメも「感覚が違う」と思われることもあるのだろうか。その時代その時代に愛されたアニメを見返してみると、また新たな発見があるかもしれない。

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