■『異世界薬局』

(C)高山理図/MFブックス/「異世界薬局」製作委員会

 2016年1月にMFブックスから刊行され、シリーズ累計230万部突破の高山理図氏のライトノベルがアニメ化。

 現代では薬学研究に勤しみ、世界トップクラスの権威だった薬谷完治が過労で死亡し、宮廷薬師の名家の次男ファルマに転生する。

 過労で倒れる社畜が異世界転生するのは、ある意味王道展開。だが、主人公完治はもともと自分の職を辛い苦しいと思っていたわけではないようだ。もし職を苦に思っていたとしたら異世界にいっても同じ職業になってしまうのは不幸すぎる気がするのだが、どうやら彼が薬学に従事していたのは過去に関わるようだ。しかしその全容は1話の時点ではうっすらとしか描かれていない。

 強い気持ちをもって薬学に取り組んでいた彼が、医学の進歩が現代でいうところの、中世程度の医療の常識の世界に転生してしまう。間違った医療を信じ病気が蔓延していく世界を見たときに、彼がそれをどうにかしたいと思うのは自然な流れだろう。

 実在する医薬品や疾患を題材としていることから、専門家や医療従事者による指導をもとに作られているという今作。コロナウイルスが蔓延し、私たちもそういった話題に敏感になっている今だからこそ、こういった希望の持てる王道な異世界転生ものは楽しく見られるのではないだろうか。

 話題性では『異世界おじさん』がぶっちぎりだと思うのだが、異世界転生ものの魅力はそれだけではない。乱立しているからこそそれぞれの作品が趣向を凝らした展開を用意しているので、ぜひあなたもお気に入りの一作を見つけてもらいたい。今年の夏も異世界を十分堪能しよう。

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