■ランサー「クー・フーリン」が遂げた無念の死(Fate/stay night [Unlimited Blade Works])

 イスカンダルのように華々しい最期を迎えた者がいる一方で、無念の死を遂げるしかなかった者もいる。その一例が、アニメ『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』でのランサーのサーヴァント、クー・フーリンの死だ。

 ランサーは、マスターである言峰綺礼から命じられ遠坂凛の護衛をしていたが、一転して彼女を殺害するよう言われる。しかし彼女のことを気に入っていたランサーは、自分にやらせたいのなら“令呪”を使えと、綺礼の命令を突っぱねた。

 マスターからサーヴァントに対する絶対命令権である令呪は3度までしか使えず、綺礼はこの時点までに2度消化していた。最後の令呪を使えばサーヴァントはマスターに従う必要がなくなり、気に入らない相手であれば殺すこともできるようになる。つまりランサーの言葉には、「凛を殺させたらお前を殺す」という脅しの意が言外に含まれていた。

 しかし綺礼にはギルガメッシュという本命サーヴァントがいたうえ、凛の殺害はやろうと思えば彼自身にも実行可能。ゆえに彼は最後の令呪を使い、「自害しろ、ランサー」という非情な命令を下した。使えない駒は、もはや彼にとって必要なかったのである。

 これで自身の心臓を貫いたランサー。しかし彼のスキル「戦闘続行」のおかげか、即死することはなく、綺礼を刺して囚われの身だった凛を解放することに成功した。

 最後に凛と交わした「さよならランサー。短い間だったけど、わたしも貴方みたいな人は好きよ」「は、小娘が、もちっと歳とって出直してこい」というやりとりも心に染みる。無念ではあるが、信念を貫き通したという意味であっぱれな散り方だった。ファンから「兄貴」と呼ばれ親しまれたランサーらしい最期ともいえるだろう。

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