■「今さら何をやっても読者の皆さんの銀魂のキャラ像はブレない」

 また『銀魂』の実写映画化の際にも気の利いたコメントを見せていた。人気漫画の実写化はハードルが高く、キャスティングやクオリティの良し悪し、原作とのストーリーの違いが心配になってしまうもの。

 空知氏は2016年の『ジャンプ』本誌で、福田雄一監督と坂田銀時役を務める小栗旬に対して「二つの邪魔な才能を抹殺するにはいい機会だと思っております」と笑いを取ったうえで、「漫画の実写化はイメージと違うと叩かれるのが常ですが、もう今さら何をやっても読者の皆さんの銀魂のキャラ像はブレないと信じていますし、ここに集まってくれた方々はそういう覚悟もした上で、それでも泥舟でもいいから銀魂に乗りたいと言ってくれた」と製作陣への信頼を明かした。ファンの気持ちにもちゃんと寄り添った上での大人なコメントだ。

 なお、映画のヒットを受けての収入に関するネタもお約束。普通なら言いにくいこともサラっと言い放ち、そしてそれがイヤミっぽくならないのも空知氏の魅力だ。

■何で燃やしても「火は火」

 最後は筆者が個人的に好きな回答を紹介したい。それは読者からの「自分に自信が持てない」という悩みに対するアンサー。

 空知氏は「肝心なのはプラス思考だろうとマイナス思考だろうとそのあとの行動『努力』に必ず結びつける事」「カッコ悪い思考だって努力するための原動力にはなるでしょ。むしろそういうゴミみたいなもんほどよく燃える燃料になりますから」「ちゃんとした焚き火でおこしていようがエロ本で起こしていようが火は火です。でっかく燃えたやつが勝ちです」と答えた。

 空知氏自身もそのように悔しさや嫉妬心、自信のなさをバネにしてここまできたかのではと感じてしまうような人生の先輩としてのコメントは、そのまま『銀魂』本編の見開きページに出てきてもおかしくないほどの名言だ。どのエネルギーを燃料にしようが、結果として起こった火は火である。この言葉は、いつまでも心に留めておきたい。

 笑いを他人に提供する人は、単に面白いことを言っているだけではなく、実は誰より受け取り手のことを考えた思慮深い人なのかもしれない。そして空知氏が思うがままにコメントをできる背景には、作品を好んで読んでくれるファンへの信頼があるのだろう。

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