『週刊少年ジャンプ』(集英社)で2004年から2018年まで連載され、2019年に「銀魂公式アプリ」で最終話が掲載となった空知英秋氏による漫画『銀魂』。いつも無気力でふざけた主人公・坂田銀時と志村新八、神楽ら万事屋の面々を中心として描かれる人情コメディ作品だ。
基本的には1~3話で描かれるギャグ展開のストーリーが多いが、笑いの中にときおりシリアスかつ魂に響く熱い話が入ってくるのが『銀魂』の魅力。『銀魂』はその連載期間の長さゆえ、読者の中には子どもの内に作品にふれ、そのまま銀さんの背中を見て大人になったという人も多いだろう。
コミックスでは、巻中のコーナーや表紙裏のコメントなどから作者の人となりが分かるのがファンにはうれしいものだが、そんな細かい部分でも読者を楽しませてくれるのが空知氏。人生に大切なことを教えてくれる「銀魂節」は本編だけではなく、コミックスに掲載されている「読者とふれ合う質問コーナー」などに寄せられる空知氏自身のコメントも、『銀魂』の作者らしい人物像がかいま見えるものばかりだった。
その中には空知氏が銀さんのように、うまく読者の心をつかみつつ人生の師としてふるまう姿も。今回は、「まるで銀さんそのもの」な空知氏の、ウィットに富んでおり、ときには皮肉のきいたコメントを紹介したい。
■「君が答えるべきは一つでしょ」
まずは、読者から寄せられた「『憧れている人』をきかれて『銀魂というマンガの主人公、坂田銀時です!』と答えるのはアリか?」という質問に対するコメント。
これに空知氏は、「君がやろうとしていたことは例えるなら『おにぎりの具で何が好き?』『具志堅用高』って答えてるようなもんです」という謎の例を出して回答。続けて空知氏は、「自分が具志堅の話がしたいばかりに人の話を聞いてない、会話が成立していないんです」「コミュニケーション下手なオタクは自己が肥大化して他人の話をきくより自分が何を話すかばかり考える人が多い。そして会話に不具合が起こる。それがきめぇんです」とバッサリ答えた。
単に答えを明示するのではなく、なぜそれがいけないことなのかまで、子どもも大人もきちんと腑に落ちるように諭したコメントだったが、この回答はラストに、「君が答えるべきは一つでしょ。具志堅用高です」とバッチリオチがついた形で締めくくられていた。この質問の回答には、空知氏の相手に寄り添う優しさを感じる。真面目にうなずきながら読んでいたのに最後にクスッと笑えるしかけを加えることで、誰もが怒られたりたしなめられたような気持ちにならず、むしろすがすがしい気持ちになれたことだろう。あまりに見事な構成には脱帽モノだ。