■山王工業のエース沢北栄治の「よーいドン!」
最後に、同じく山王工業のエース沢北栄治の行動に注目したい。
後半残り7分、一時は20点差まで広げたリードを8点差まで詰められた山王工業。4分間でわずか3得点しかできていない状況の中、ガラリと空気を変えたのが沢北だった。
1on1のスキルで向かうところ敵なしの沢北は「神奈川の流川という芽を叩き潰しておかないと」と、流川をはじめとした湘北メンバーの目の前でボールをゴールに向けて放り投げ、おちょくるように「よーいドン!」と走りはじめる。「ナメやがってっー!!」「待てコラァ!!」と、必死で追いかける湘北メンバーだが、まったく追いつけない。そして沢北は、トップスピードのまま、圧巻の片手ダンクシュートを決めるのだ。
自分と似たタイプの天才型プレーヤー流川を見つけた高揚感でそんなことをしたのかもしれないが、インターハイという大舞台、しかも、ちょっと前までチームが追いつかれそうな局面での大胆行動。自信があるからこそのプレーなのだろうが、もしもこのダンクが失敗していたら……? 深津や河田といった先輩たちのキツーい制裁が待っていたに違いない、なんて想像してしまった。
今回紹介した行為はどれも相手にやられたら嫌なものだろう。とはいえ、実は最も暴言暴挙が多いのは、主人公の桜木花道だったりするのだが……。いずれにせよ、ライバルたちのムカッとくる挑発的な言動もすべて『スラムダンク』の魅力なのだ。2022年12月3日の映画公開を楽しみに、何度も読み返したいと思う。