■殺し合う「自分たち」の姿を見て発狂したトゥワイス・分倍河原仁
続いてはヴィラン連合の幹部であるトゥワイスこと分倍河原仁。ラバースーツとマスクで身体と顔全体をぴったり覆っているのが特徴である。人格が分裂していて、2人で会話しているような話し方をする。しかもそれぞれが真逆のことを話すのでなかなか紛らわしい。
個性は1つのものを2つに増やす「二倍」で、データさえあれば生き物でも人間でも複製することができるというもの。人間の場合は見た目はもちろん、性格や個性すらコピーすることが可能だ。
普段はおしゃべりで陽気なトゥワイスだが、そんな彼にも悲しい過去があった。
彼は中学生の頃、両親がヴィラン犯罪に巻き込まれて亡くなり、天涯孤独の身となってしまう。その後は真面目に働いていたが、不運が重なり職も住む場所も失う。生来の目つきの悪さのせいで誰とも仲良くなれず、孤独を感じた彼は、理解者を求めて自分を複製し始める。そして強盗や窃盗といった悪事に手を染め、どんどん転落していった。
やがて増えすぎた分身は、互いに「俺が本物だ」と主張して殺し合いを始める。自分が殺し殺されする場面を見続けた本体は、自己を保てなくなり精神崩壊した。さらに以後は自分を増やすことができなくなり、マスクをかぶらないと日常生活を送ることすら困難になってしまう。
その後トゥワイスはヴィラン連合に入り、ようやく自分の居場所を見つけることになる。仲間たちと楽しそうに過ごしている姿は、ダークサイドという言葉などとは無縁に思えるほどだ。
国内外で高い人気を集めるヒーローアクション漫画『僕のヒーローアカデミア』。キャラクターの作りこみにはかなりのこだわりが見られ、ヒーローだろうとヴィランだろうと、それぞれが背負うものがていねいに描かれている。極悪非道に思えていたキャラクターたちのことも、その過去や事情を知れば彼らもまた血の通った人間なのだと思い知らされるはずだ。アニメ6期ではキャラクターたちがどのような姿で描かれるのか、秋からの放送を楽しみに待ちたい。