■陵南の“ビッグ・ジュン”こと「魚住純」
陵南高校のキャプテン魚住純も、努力を重ねてきた一人である。「ビッグ・ジュン」の異名がつけられるほど県内でも有名な巨漢だったが、入部したての頃は厳しい練習にまったくついていけず。連日、田岡監督に厳しく怒鳴られながら、へばっては吐いて……を繰り返していた。
「自分はただでかいだけって陰口たたかれてるのも知ってる」と泣きながら退部を申し出た魚住に、田岡監督は大きな体は立派な才能だと褒め、「お前が3年になった時、陵南初の全国大会出場」「オレはそんな夢を見ているんだ…」と励ましていた。
かつてチームのお荷物だった魚住は、3年時には主将としてチームを牽引。202センチ・90キロの恵まれた体格から繰り出すパワープレイ、フル出場できるスタミナ、個性的なメンバーをまとめあげる統率力を兼ね備えた大黒柱に成長を遂げている。
過去の回想シーンを見ると、そこからの脱却には並々ならぬ努力があったことが想像できる。湘北の赤木剛憲とは同じセンター同士でライバル関係でもあるが、赤木のゴール下の得点感覚は天性のものであり、自分にはそれがないことも認めていた。
しかし、それでも魚住は「オレはチームの主役じゃなくていい」と、仙道や福田を活かすプレーに専念する方向に切り替えられたのは、一度挫折を味わい、そこから努力で這い上がった男だからこそに思える。
ほかにも作中には“努力の人”はたくさん登場する。今回あえて入れなかったが、その最たる例は、陵南戦で湘北の勝利を決定づけるスリーポイントを決めた木暮公延だろう。それに天才と称されるキャラが努力していないワケではないのも言うまでもない。しかし、入部時に目立たなかった存在がたゆまぬ努力の末、しっかり活躍するシーンが描かれているのは『スラムダンク』の面白さであり、魅力的な部分ではないだろうか。