■凶暴なヒグマに傷を負わされても表情ひとつ変えない

 続いては人間相手でなくヒグマ相手の戦闘シーン。コミックス第7巻で杉元とアシㇼパ、白石、キロランケの4人は旅の途中、アシㇼパの大叔母が奪われた宝物を取り返すため、ダンというアメリカ人のもとへ向かう。牧場主であるダンは、ここ最近出没するヒグマの対処に悩まされているといい、ヒグマを倒すことを条件に宝物を返すと約束する。

 そのヒグマとの交戦中、杉元は爪で顔を引っかかれてしまう。銃で撃たれ弱体化していたとはいえヒグマの力は強く、杉元の顔には3本の痛々しい爪痕がついた。しかしそんな状況でも彼はまったく動揺せず、痛がる素振りすら見せずにヒグマを仕留めた。さらに白石から「隠し包丁入れた焼きナスみたいになってんじゃん」と言われるまで、顔の傷については一切触れていなかった。

 その後アシㇼパの手で傷によく効くというヒグマの油を塗ってもらい、次巻ではだんだん傷がふさがり最終的には完治している。杉元の人並外れた回復力がよく分かるエピソードだった。

■狙撃の名手にヘッドショットされても死なない

 最後に「不死身の杉元」エピソードの中でももっとも衝撃的なものを紹介する。コミックス14巻第137話、網走監獄での出来事である。

 杉元は金塊のありかを知る「のっぺら坊」を見つけ出し、彼がアシㇼパの父親・ウイルクだという事実を確認する。そして詳しい話を聞き出そうとするが、ウイルクは「アシㇼパに伝えろ…金塊…」と言った瞬間、狙撃され絶命してしまう。次の瞬間杉元も額に弾を撃ちこまれ、倒れて動かなくなってしまった。

 2人を撃ったのは狙撃の名手・尾形百之助。そんな相手からヘッドショットされたということもあり、読者のあいだでは「不死身の杉元もさすがにやばいのでは?」という声が上がっていた。

 しかし続く138話、なんと杉元は病院のベッドにちゃんと座り、握り飯をむさぼり食うという元気な姿を見せた。撃たれる直前にウイルクを盾にして狙いを逸らしたことと、尾形が使用したのが「不殺銃弾」とも呼ばれる威力の低い弾だったことが幸いしたようだ。脳みそは少々欠けてしまったが、あっという間に回復してこれまでと変わらない様子で動き回るまでになった。不死身もここまで来るともはや笑うしかない。

 ハラハラドキドキのストーリーと、迫力たっぷりの戦闘シーンが魅力の『ゴールデンカムイ』。主人公の杉元佐一は「不死身」と称されるだけあって、さまざまな伝説的エピソードを持っている。今回紹介したのはその中のほんの一部。ぜひ実際に作品を読んで、彼の化け物っぷりをその目で確かめてみてほしい。

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