■「嫉妬」のホムンクルス・エンヴィーの真の姿
中性的でかわいらしい見た目が特徴のホムンクルス・エンヴィー。しかし第13巻第51話で彼が見せた「真の姿」は、思わず目を逸らしてしまうほど醜いものだった。
全体としては巨大なトカゲのような形だが、身体中におびただしい量の人間の顔が生えている。しかもそれぞれがうっすらと自我を持っており、「殺して」「おかあさン」などといった言葉を発するのだ。漫画でも十分恐ろしいが、アニメでは動きや声がついたことでよりホラー感が増していた。
エンヴィーのこの姿を目の当たりにしたエドは、ショックのあまり戦意喪失してしまうが、無理もない話。一読者としても、あまり夜には思い出したくない光景である。
■仲間だろうが容赦なし!プライドがグラトニーを食らうシーン
敵であるホムンクルス組に血も涙もないのは分かりきっていることだが、なかでも特に衝撃的だったのは第21巻の第87話、「傲慢」のプライドが「暴食」のグラトニーを食べるシーンだ。
エドやリンたちとの戦いで消耗したプライドは、ともに行動していたグラトニーを自分の血肉へと変えてしまう。笑みを浮かべて舌なめずりをし、怯えるグラトニーを躊躇なく食らう姿は、悪魔以外の何物でもない。
ずんぐりしていて言動が幼いグラトニーは、敵とはいえマスコット的なかわいさを感じさせるキャラ。そんな彼がはらわたをぶちまけながら食らい尽くされる姿は、さすがに見ていて辛いものがあった。プライドが幼い少年の見た目をしているからこそ、よけいにその残酷さが際立つ。
それにしても、「暴食」の名を持つ彼がむしゃむしゃ食べられて死ぬとは、なんとも皮肉が効いている。
2021年7月12日に連載開始20周年を迎え、今後もよりいっそうの盛り上がりが期待される『鋼の錬金術師』。本シリーズに触れたことがない方も、昔読んだけれど内容を忘れてしまったという方も、これを機会に原作の漫画からチェックしてみてはいかがだろうか。もちろんアニメや実写映画、ゲームなど、その他のメディアからシリーズの魅力に触れるのもおすすめだ。