『パリピ孔明』「チキチキバンバン」だけじゃない! 木村昴・置鮎龍太郎・千葉翔也、ラップもすごかった音楽アニメとしての可能性の画像
(C)四葉夕卜・小川亮・講談社/「パリピ孔明」製作委員会

 テレビアニメ『パリピ孔明』の最終回となる第12話「英子の歌」が6月21日からTOKYO MXほかで順次、放送となる。

 原作・四葉夕ト氏、作画・小川亮氏による『週刊ヤングマガジン』で連載中の同名漫画を原作とした同作は、天才軍師・諸葛孔明が現代の渋谷に転生し、歌手の卵である月見英子の歌声に惚れ込んだことで彼女のプロデュースを申し出るという物語。アニメ最終回となる第12話は、音楽フェス・サマーソニアの出場をかけた“10万イイネ企画”でラッパーのKABE太人(CV:千葉翔也)が客から大ブーイングを浴びてしまい、赤壁の戦いばりのピンチの中、月見英子(CV:本渡楓/歌唱:96猫)が歌声で大逆転を計るというもの。

 原作は2020年に「次にくるマンガ大賞」のウェブマンガ部門「U-NEXT賞」に選ばれるなど、漫画好きの間で高く評価されていた作品だが、美しいアニメーションと、作品の本筋である夢を持った若者の切磋琢磨する様子が視聴者の心を打ち、2022年の春アニメでも特に大きな話題を集めた。

■本格的ラップバトルまで描いた『パリピ』

 今作は放送開始前、諸葛孔明の“転生モノ”というやや出オチ感のある設定が注目されがちだったが、今期の中でも飛び抜けて音楽面が評価されたアニメでもある。特に第5話からはラップ要素まで入り、アニメで本格的にラップバトルを描いた作品としても話題になった。

 第5話「孔明、韻を踏む」では、過去にMCバトル3連覇を果たしていたものの、期待とディスに押しつぶされて現場から退いていた天才ラッパー・KABE太人が登場。そしてそんなKABEの現状にイラ立つライバルとしてカリスマラッパー・赤兎馬カンフー(CV:木村昴)があらわれ、街中で突如ラップバトルを挑むといった展開が描かれた。

 また続く第6話「孔明’s フリースタイル」では、戦いを挑まれたKABEが数年ぶりにマイクを握り、孔明(CV:置鮎龍太郎)と16小節の3ターン制で延長含む約8分間のラップバトルを繰り広げた。

 全12話の折り返しとなるこの5話・6話で、主人公の英子に歌を歌わせずラップをメインに見せたことで、音楽アニメとしての楽しみ方の幅がより広がったのではないだろうか。

 第5話で突如目の前にあらわれ「今の状態はただの貸しだぜ」「いつまで自分に足枷はめてんだKABE」など韻を踏みつつKABE太人を強烈にディスった赤兎馬カンフーの声優を務めたのは木村昴。木村といえば本業と同じぐらい忙しく活躍しているのがラッパーとしての仕事。山田一郎役を務める音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』(以下ヒプマイ)では「好良瓶太郎」の名義で作詞活動を行い、『ヒプマイ』生放送番組では毎回即興ラップを披露。さらに初期段階ではラップ経験のない他の声優の収録に立ち会いラップの指導も行っているなど、その実力と熱意は業界内外でも折り紙つきだ。カリスマラッパー・赤兎馬カンフーを演じるのにこれほど適した声優は他にはいないだろう。

 なお第6話では、KABEがラップを始めるきっかけとなった佐々木というキャラクターが登場したが、このキャラを担当したのが『ヒプマイ』の有栖川帝統役である野津山幸宏だった。

 ヒプノシスマイクという人気と実力を下地にした声優が脇を固める中で、KABEを演じた千葉は、ラップの経験は少ない様子。だが、「俺のライムに右往左往 してんのが目に浮かぶぜ諸葛亮」「孔明やめて就職活動 でもしとけよ究極の弱小」などリズムもバッチリ。孔明演じる置鮎龍太郎の“お経ラップ”とでも呼べるような独特のラップとの応酬で、後半は「みんなに感謝 響けこの賛歌 やっと出てきたよ俺なりのアンサー」と徐々にエモくなっていくリリックにあわせてラップも感情的になっていく様子が見事だった。KABEが一度逃げたラップに立ち戻ってきた覚悟や先に進むと決めた決意などが詰まったもので、聞いているこちらも熱くなる内容だった。

 同作のラップ監修は「HOME MADE 家族」のMICROが手がけているが、第6話では約8分間、セリフではなくラップで感情の変化を伝えることに成功した。アニメになったことで、原作漫画の持っていた世界観がより広がったのではないだろうか。

 第11話「草船借箭」でライバルユニット「AZALEA」およびそのファンを強烈にディスったことで渋谷中から大ブーイングを食らった月見英子とKABE太人。最終話でどんな歌声を響かせるか、楽しみに放送を待ちたい。

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