■ヒュンケル(ダイの大冒険)
『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(原作・三条陸氏、漫画・稲田浩司氏、監修・堀井雄二氏)に登場するヒュンケルは、魔王軍の不死騎団の団長を務めていたが、改心してアバンの使徒として正義のために戦うことになる。
魔物である育ての親・バルトスをアバンが殺したと思いこみ、師匠・アバンを恨んでいたワケだが、のちにそれは誤解であることが判明。魔王軍を離脱してからは、ダイを始めとするアバンの使徒の頼もしい兄貴分のような立ち位置におさまった。
もともとアバンの一番弟子なので、なんとなく許された感じもするが、よくよく考えるとヒュンケルは魔王軍・不死騎団を指揮し、パプニカ王国を滅亡させた張本人。パプニカ王国と言えばレオナ姫の故郷であり、うまく逃げられた国民がいるにしても、あの破壊され尽くした街の様子から察するに侵攻時にはかなりの犠牲者が出たことは想像に難くない。
ヒュンケルは自ら裁きを求め、レオナは許したかもしれないが、愛する人や親しい人を失ったパプニカ王国の人たちは、その後のヒュンケルの活躍をどのような気持ちで見守ったのか気になってしまう。
■藍染惣右介(BLEACH)
最後に紹介するのは、久保帯人氏の『BLEACH』に登場する藍染惣右介。もともと藍染は一護と同じく死神で、護廷十三隊の五番隊隊長を務め、多くの人々から慕われていた人物だ。彼の場合は仲間になったというより、仲間だと思っていたけど裏切り、最後に再び共闘するという複雑な経緯をたどった人物である。
とくに副隊長の雛森桃は誰よりも藍染のことを敬愛。死んだと思われていた藍染と再会を果たした場面で彼女は涙を流して喜んだが、そんな雛森の体に藍染は刀を突き刺した。
藍染の本性は残虐かつ冷酷な野心家で、用済みになった人物は容赦なく切り捨てる極悪非道な男。自分の目的遂行のためには慕う相手も平気で裏切り、野望を実現しようとしたが、一護との戦いに敗れて拘束された。
これで退場かと思いきや、圧倒的な強者であるユーハバッハが現れたことで事態は急転。紆余曲折ありながら、最終的にはユーハバッハとの戦いで黒崎一護と藍染惣右介は共闘することになる。
とはいえ、戦いの後に一護の仲間になったワケではなく、藍染は再び幽閉。わずかとはいえ、最凶最悪の敵だった男が最強の味方になった最たる例であろう。
かつてのライバルが味方になる展開は、少年漫画のお約束ではあるが、その相手が罪なき人まで殺しまくった極悪人となると、少しだけ複雑な感情を抱いてしまうのも読者心理。個人的には許しがたい真の悪人であれば、藍染惣右介のような一瞬の共闘くらいがちょうどいいと感じてしまうのだが、漫画好きの皆さんの考えはいかがだろうか。