1992年から1996年まで『少女コミック』(小学館)で連載されていた渡瀬悠宇氏の少女漫画『ふしぎ遊戯』は、朱雀の巫女となった主人公の夕城美朱(ゆうきみあか)と、彼女を守護する七星士が自国を平和に導くために冒険する物語だ。
1995年にはアニメ化もされ大ヒットとなり、連載完結後も『玄武開伝』『白虎仙記』とシリーズが広がった。今年で連載30周年を迎え、5月19日まで周年を記念して漫画配信アプリ「サンデーうぇぶり」にて全話無料キャンペーンが行われている。
同作は少女漫画の王道ともいえるイケメンとの恋愛だけでなく、古代中国のような異世界での冒険、敵対する国との少年漫画的なバトルなど、さまざまなドキドキが詰まった名作漫画。全18巻にわたる、物語本編となる通称「朱雀・青龍編」では、壮大な物語の裏に数えきれないほどの名シーンが存在する。
中には「今まで読んだ漫画で一番泣いた」という人も多い、少女漫画界の歴史に残るものも。今回は懐かしさと当時の感動がよみがえる『ふしぎ遊戯』の泣ける名シーンを紹介したい。
■「生きてりゃあねぇ!! つらいことでもいつか笑って懐かしく話せる時が来るのよ!」
『ふしぎ遊戯』のストーリーは、前半は仲間となる七星士を探す旅、後半は神獣召喚のための神座宝の争奪戦というように展開していく。前半は個性的なキャラが次々と仲間となっていき一行と一緒に旅をしているような楽しい気分になるのだが、物語は次第にハードになっていき、道中で多くの敵味方が命を落としていく。
読者に最も大きな衝撃を与えたのが、「柳宿(ぬりこ)」というキャラの死だろう。柳宿は、亡くなった妹を思い女装をしているキャラクター。明るい性格のアネゴ肌で、怪力キャラもあいまって一行のムードメーカーの一翼をになっていた。
そんな彼だが、神座宝が納められていた雪山で敵の尾宿と1人きりで戦い、体を貫かれて致命傷を負う。敵はなんとか倒したものの美朱が到着した時には時すでに遅く、結果的に両陣営の七星士の中ではじめの犠牲者となった。
彼はこの戦いの前に、仲間たちに自身の過去を語り、長い髪を切って過去と決別。美朱と鬼宿の仲を応援することを決意していた。重い過去を抱える彼の「生きてりゃあねぇ!! つらいことでもいつか笑って懐かしく話せる時が来るのよ!」というセリフは、心にズンと響く作中屈指の名セリフだ。
読者に朱雀を呼び出す使命の厳しさを実感させ、物語の転換点ともいえる存在であった柳宿。なおアニメでは柳宿が死亡する回は特殊エンディングとなっており、泣ける粋な演出がなされている。今でもなお、彼の生きざまに涙が止まらない。