■『ドラゴンボール』の強さのベースとなった貴重なおじさん

 鳥山明氏の代表作『ドラゴンボール』の中でもっとも印象深いモブキャラというと、個人的にはサイヤ人編に登場したおじさんの顔が真っ先に思い浮かぶ。

 のどかな農村地帯に突如ラディッツの乗った宇宙船が落下。そこに真っ先に駆けつけたのが麦わら帽子をかぶったメガネの中年男性だ。驚く男性を見たラディッツは「戦闘力…たったの5か…ゴミめ…」と吐き捨てるのだが、これが戦闘能力を数値化するスカウターの初登場シーン。

 ちょっとぽっちゃりした一般男性が「戦闘力5」ということで、その後に登場する猛者たちとの戦闘力比較で盛り上がったことを思い出す。また「戦闘力…たったの5か…ゴミめ…」というラディッツのセリフもキャッチーで、仲の良い友人と対戦ゲームをするときの煽り文句として真似したこともあった。

 ラディッツの出現に動揺して発射した銃弾をキャッチされ、逆に指で弾かれた弾を食らってあえなく死亡した、名も無き戦闘力5のおじさん。彼の数値が『ドラゴンボール』の世界における一般人の戦闘力の基準となり、さまざまな考察の余地を広げてくれるきっかけになったと言っても過言ではない。


 このほかの作品にも記憶に残るモブキャラはいろいろいると思うが、名前がなく、出番もほんのわずかなキャラながら、しっかり作中に爪痕を残した功績は称えられるべきなのかもしれない。

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